映画

フェデ・アルバレス『死霊のはらわた』(Evil Dead、2013)

『ドント・ブリーズ』シリーズのフェデ・アルバレスが、サム・ライミ監督の1981年の同名作品をリメイクしたもの。サム・ライミは脚本と製作に回っている。オリジナルは未見だが、ジャンプスケアや文字通り血の雨が降る派手な演出、そして恐怖というより不快…

『自撮りのために』(Selfie Mountain、2019)

15分ほどの短編。アジアンドキュメンタリーズの配信で、特集〈観光公害〉の一本。インドネシア・ジャワ東端にあるイジェン(Ijen)火山。900×600メートルの火口では雄大な火口湖の姿が望め、絶好の撮影ポイントになっている。火口付近への観光客の立ち入りは…

ルル・ワン『フェアウェル』(The Farewell/別告訴她、2019)

NYにひとり暮らししている30歳の作家(志望?)ビリー(碧莉)は、期待をかけたフェローシップの不合格通知が届き落胆する。それと同時に、長春に暮らす父方の祖母がステージⅣの肺癌だと知らされショックを受ける。 中国語タイトルは「彼女に言わないで」。…

ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(The Blair Witch Project、1999)

ファウンド・フッテージホラーの有名作品なので、今さらながら見てみた。後からこの手法はもっと洗練されてきたこともあり、今なら話題になることもなさそうで、先行作の悲哀を感じる。ロケ地はメリーランド州の国立公園である由。ブレアの魔女の伝説を取材…

アニーシュ・チャガンティ『RUN/ラン』(Run、2020)

ダイアン(サラ・ポールソン)は娘のクロエ(キーラ・アレン)と二人暮らし。複数の疾患を抱えて車椅子生活のクロエは、工学に関心を持ち、ホームスクーリングで学びながら大学の合格通知を心待ちにしている。 保護者の集いでは、子供の自立に際して涙ながら…

シルヴァン・ホワイト『スレンダーマン 奴を見たら、終わり』(Slender Man、2018)

ネット上のミーム「スレンダーマン」に、ボディホラーの要素を交えた映画。中学生向けに作られたようで、恐怖描写は控えめだが、画面に映らない部分への妄想をたくましくすると別の側面も見えてくる。 スレンダーマン 奴を見たら、終わり (字幕版) ジョーイ…

エドガー・ライト『ラストナイト・イン・ソーホー』(Last Night In Soho、2021)

黄金の60年代に憧れる少女エロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンの服飾学校から合格通知を受け取り、コーンウォールの田舎を出る。彼女の母もかつてロンドンに暮らしたことがあったが、大都市に飲み込まれ、エロイーズが7歳の時に命を絶ってい…

ジョン・エリック・ドゥードル『REC:レック/ザ・クアランティン』(Quarantine、2008)

夜勤の消防士を取材に来た女性レポーターのアンジェラと男性カメラマンのスコット。このカメラの映像によるPOVホラー。 舞台はロサンゼルス、救急車の8割は消防署から出動し、消防士は緊急救命士の資格も持っていると取材に答える。日本の観客からすると、救…

アンガ・ドゥウィマス・サソンコ 『ベン&ジョディ』(Filosofi Kopi 3 Ben & Jody、2022)

アンガ・ドゥウィマス・サソンコ監督『珈琲哲學 恋と人生の味わい方』(2015)のシリーズ第三作。Netflix(日本語字幕)で鑑賞。 https://www.netflix.com/jp/title/81597206 一作目でカフェを開店し、究極のコーヒーを求めて修行を重ねたベン(チコ・ジェリ…

ルパート・ウェインライト『ザ・フォッグ』 (The Fog、2005)

ジョン・カーペンター監督の同名作品(1980)のリメイクホラー。 アントニオ島という小さな島。港町の建設の功労者として称えられる四人の男を記念した像が作られ、除幕式を迎える日、海上から濃い霧がやってくる。ちょうど時を同じくして、町を出ていたエリ…

キモ・スタンボエル『Ivanna』(2022)

Amazon Prime Video(日本語字幕はなし)で鑑賞。モー・ブラザーズの一人、キモ・スタンボエル監督作品。85年生まれのスンダ人女性作家で歌手のRisa Saraswatiの小説を原作とするホラー〈Danur〉シリーズ(Awi Suryadi監督)のスピンオフにあたるとのことだ…

Rizal Mantovani『Kuntilanak 3』(2022)

Amazon Prime Videoで鑑賞。日本語字幕はないが、英語・中国語は配信されている。 『クンティラナック: 鏡の中の幽霊』の続編にあたる。里子となった屋敷でアンティークの鏡の中から出現したクンティラナックを倒したディンダ(Nicole Rossi)。その後、怒り…

ローズ・グラス『セイント・モード 狂信』(Saint Maud、2019)

冒頭、女の長い頭髪から血が滴る。カメラが引くと、病室に横たわる女は身体を半分ベッドの外に出して、胸から血を流して死んでいる姿が映る。隅にうずくまる女性看護師、見上げた天井にコックローチが這う。 英国の小さな街で住み込みの看護師として緩和ケア…

マイケル・チャベス『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』(The Curse of La Llorona、2019)

死霊館シリーズのスピンオフのような位置づけで、ウォーレン夫妻は登場しないが、人形アナベルを封印した神父がちょっと登場する。『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(2021)のマイケル・チャベスの長編初監督である由。 〈ラ・ヨローナ〉とはメキシコの伝…

ゲイリー・ドーベルマン『アナベル 死霊博物館』(Annabelle Comes Home、2019)

アナベルシリーズの脚本家が初めてメガホンを撮った作品。 ロレインとエドのウォーレン夫妻が自宅の保管室に封印した呪われた人形アナベル。一年後、夫妻の留守に、娘ジュディのベビーシッターを頼まれたメアリー・エレンの友人ダニエラが保管室に入り込んで…

オリヴィア・ワイルド『ドント・ウォーリー・ダーリン』(Don't Worry Darling、2022)

マリリン・モンローのような装いの妻を専業主婦として家に置いておくのが自慢だった時代。整然と設計され塵ひとつないヴィクトリアという企業都市は、社員とその家族のみが立ち入りを許され、指定の居住区域から出ることは許されていない。家の中も清潔に整…

永井聡『キャラクター』(2021)

漫画家のアシスタントとして長年働いている山城圭吾(菅田将暉)。画力は抜群だと誰もが認めるが、サスペンスホラーを支えるだけの魅力的なキャラクターが作れないのが欠点。これを最後と決めた持ち込み原稿も断られ、漫画家への道を断念して就職しようと決…

程偉豪『僕と幽霊が家族になった件』( 關於我和鬼變成家人的那件事、2023)

ホモフォビアの警官が、捜査中に赤い封筒を拾ってしまい、ひき逃げ事故で亡くなったゲイの若者と冥婚するはめになる。その晩から若者の幽霊につきまとわれ、さっさと願いをかなえて転生させようと奔走するうち、捜査中の薬物事件のボスとひき逃げ犯の関係が…

スティーヴン・クォーレ『ファイナル・デッドブリッジ』(Final Destination 5、2011)

直前の予知夢で大惨事からからくも生還したものの、生存者が一人ずつ不幸な偶然の連鎖で死んでゆくシリーズ5作目。高校生が主人公だったこれまでと異なり、社員研修のバスが通過する際に吊り橋が崩落するのが発端。 どうせエンドクレジットまで見ずに客は帰…

ジェームズ・ウォン『ファイナル・デッドコースター』(Final Destination 3、2006)

再びジェームズ・ウォンがメガホンをとった〈ファイナル・デスティネーション〉シリーズ第三作。 事故の模様を幻視した主人公が回避行動を取り、それによって助かったはずの人々が次々にアクシデントに見舞われ……という同じパターンだが、とはいえ小さなミス…

ウィリアム・ブレント・ベル『エスター ファースト・キル』(Orphan: First Kill、2022)

2009年の『エスター』の前日譚。先天性の疾患で10歳の少女の姿で成長が止まっているエスター。実際は30代で、第二次性徴も見られるが、子供服を着てしまえば10歳といって通用する。彼女は元の名前をリーナといい、最も危険な患者として精神病院に収容されて…

スコット・パトリック『ウィジャ・シャーク 霊界サメ大戦』(Ouija Shark、2020)

親類のコテージの留守番を任され、夏を過ごしにやって来た若い女たち。中の一人がビーチでウィジャボードを拾い、試しに遊んでみたところから、サメの亡霊を召喚してしまう。 林の中をふわふわ飛んで来る半透明サメに、一人ずつ食われてゆく女たち(と無関係…

曾國祥『ソウルメイト/七月と安生』(七月与安生、2016)

中国・香港合作映画。13歳で出会った二人の少女の対称的な人生。温かい家庭で育った優等生の七月と、出張ばかりで家にほとんど帰らないシングルマザーの娘・安生。七月は難関校に進学し、同級生の家明と交際し始める。安生はようやく義務教育から解放された…

テリー・サムンドラ『漆黒の井戸の底から』(Kaali Khuhi、2020)

ヒンディー語ホラー映画。90分と尺は短いが、インドの農村(どの地域かは分からなかった)を舞台にしたフェミニストホラー、というより家父長制ホラーという趣のフィルム。インド製作のホラーは初めて観た。 町で暮らしている夫婦と、娘シヴァンギ。父の母が…

ジョン・M・チュウ『クレイジー・リッチ!』(Crazy Rich Asians、2018)

ゲーム理論の大学教授レイチェル(コンスタンス・ウー/呉恬敏)は、シンガポール人の恋人ニック(ヘンリー・ゴールディング)に連れられ、友人の結婚式に出席することに。中国出身の母に女手一つで育てられたアメリカ生まれの彼女は、シンガポール華人の風…

エヴァン・スピリオトポウロス『アンホーリー 忌まわしき聖地』(The Unholy、2021)

1845年、マサチューセッツのバニフィールドという町。のっけから処刑される魔女の視点で始まる。目の部分だけ開いた何かを顔に被せられ、吊り下げられて火を放たれる。魔女の魂は小さな陶器の人形に封じられる。これはkern baby と呼ばれるお守りの人形で、…

中島哲也『来る』(2018)

序盤に田舎の親類の集まりと、結婚式のシーンが交互に出て来て、表面上は和やかなのにものすごく気持ちの悪い感じが続く。極めつけは新居披露のホームパーティーで、外面ばかりよい夫(妻夫木聡)と、その縁者の中に放り出された妻(黒木華)。 夫の田舎では…

ジョン・タートルトーブ『MEG ザ・モンスター』(The Meg、2018)

米中合作のサメ映画。上海沖の観測基地で、海底と思われていた層のさらに下に未知の領域があるとの予測から、有人探査機が潜水する。そこには確かに空間が広がっており、生命体の存在すら確認されたものの、それは巨大イカと、絶滅した古代のサメ・メガロド…

王鼎霖『第九分局』(2019)

台湾の人情ホラー映画。冥土の門が開き、死者の帰ってくる鬼月の終わりに公開されたもののようだ。昔の中国では冥界にも官僚制がしかれ現世を鏡に映したように想像されていたが、冥土に閻魔大王のような裁判官がいるなら、その前に警察が捜査を行ってもおか…

ウィリアム・フリードキン『エクソシスト』(The Exorcist、1973)

カトリックの悪魔祓いの話だが、アザーンと共に太陽の色が変わってゆく印象的なオープニングだ。誤ってほかの映画を再生してしまったのかと思ったが、高齢の神父はイラク北部の遺跡で発掘調査に参加しているという設定だった。彼は帰国前、悪霊の頭部を象っ…