映画

ウィリアム・フリードキン『エクソシスト』(The Exorcist、1973)

カトリックの悪魔祓いの話だが、アザーンと共に太陽の色が変わってゆく印象的なオープニングだ。誤ってほかの映画を再生してしまったのかと思ったが、高齢の神父はイラク北部の遺跡で発掘調査に参加しているという設定だった。彼は帰国前、悪霊の頭部を象っ…

デヴィッド・R・エリス『デッドコースター』(Final Destination 2、2003)

『ファイナル・デスティネーション』シリーズ第二作。第一作での飛行機事故からちょうど一年後。ハイウェイでの玉突き事故を幻視した主人公のキンバリーは、ハイウェイに入る車列を妨害する。予兆の通りに大事故が起こるが、一命をとりとめたはずの男女が順…

清水崇『犬鳴村』(2020)

都市伝説に取材したホラー映画。発電用ダム建設で水没した犬鳴村には、日本国憲法の通用しない前近代的世界が残ると噂される。 橋のたもとの電話ボックスに、深夜2時になると電話がかかってくる。それに出た者は、通行不能となっている犬鳴村へのトンネルを…

オーレン・ペリ『パラノーマル・アクティビティ』(Paranormal Activity、2007)

シリーズ2・3を先に観て、数か月空けてようやく1を観た。呪われた姉妹のうち、姉とそのパートナーの話だが、超常現象の撮影のために設置されるカメラは一台だけで、後のシリーズ作品と比べて本当にミニマルな作り。恐怖の演出も最小限にしてあり、シリーズ作…

エミール・エドウィン・スミス『ディープブルー・ライジング』(Ice Sharks、2016)

極地観測所がその凶悪かつ知能の高いサメによって孤立させられ、沈められる脱出パニック。『ディープ・ブルー』シリーズと勘違いして観たが、邦題がややこしいだけで特に関係はなかった。 北極の氷に囲まれて独自に進化を遂げたサメたちが、温暖化によって氷…

タイ・ウェスト『Pearl パール』(Pearl、2022)

『X エックス』シリーズ第二作、老婆パールの若き日を描く。時代背景は『X エックス』の60年前、第一次世界大戦中の1918年で、夫ハワードは出征しており、しかもスペイン風邪の流行中。 happinet-phantom.com 家畜小屋の扉が開いて映画が幕を開けるが、パー…

莊絢維『人面魚 THE DEVIL FISH』(人面魚:紅衣小女孩外傳、2018)

台湾の都市伝説ホラー〈赤い服の少女〉シリーズ、第三作にして前日譚。人間を山に誘い込む〈魔神仔(モシナ)〉という山怪は、シリーズ第二作で虎の姿の神〈虎爺〉によって鎮められる。その時に神降ろしをし、虎爺を自らに憑依させて戦った若い童乩(タンキ…

タイ・ウェスト『X エックス』(X、2022)

3月に読んだホラー映画の女性表象についての批評に、父権的な象徴的秩序をさげすみ転覆する力を持った、近年のホラー映画に表れる「Monstrous feminine」の例として『X エックス』と『Pearl パール』も上がっていた。 theinitium.com ちょうど『Pearl パール…

デヴィッド・ブルックナー『ザ・リチュアル いけにえの儀式』(The Ritual、2017)

英国ホラー。大学時代の悪友たちが旅行の計画を立てる。その矢先、立ち寄ったコンビニで強盗に襲われ、中の一人が殺害されてしまう。自分ひとりだけ身を隠し、目の前でむざむざ友人を殺されたことに罪悪感を抱き続ける主人公。 半年後、亡き友人の追悼のため…

Raditya Dika 監督・主演『リーサル・ゲーム』(Target, 2018)

インドネシアのデスゲーム・コメディ。映画撮影のために集められたセレブたちがゲームを命じられる。そのドタバタ喜劇が大半だが、主人公と恋人はめでたく救出され、警察の捜査により黒幕も判明したものの……。 ワイヤーや特殊効果を用いず、サウンドも入れな…

ダイナ・リード『ラン・ラビット・ラン』(Run Rabbit Run、2023)

離婚して一人で娘ミアを育てている産婦人科医のサラ。ミアの7歳の誕生日、家に白ウサギが迷い込んで来てからというもの、ミアは会ったことのない祖母に会いたいとごね始める。しかしサラは母とは長く不仲で、娘と会わせるつもりはなかった。 『夢十夜』の夜…

Rako Prijanto『Para Betina Pengikut Iblis』(2023)

インドネシアのゴア・フィルム。Netflixで英語字幕配信。題名は「悪魔の女信徒たち」とかいう意味のようだ。中身は悪魔と契約した二人の女たちによる、それぞれの復讐のゴア描写が中心。一人は膝の腫れ物で歩けない父の介護に縛り付けられている少女で、家出…

キム・ジンウォン『ワーニング その映画を観るな』(암전、2019)

霊が映った映像はよくあるが、霊が撮らせた映画というのは初めて聞いた。なかなかその曰く付きの映画が出て来ないので、「牛の首」のような話かと思いながら観ていたところ、ファウンド・フッテージそれ自体より恐ろしい事態へと展開する。 ワーニング その…

程偉豪『紅い服の少女 第二章 真実』(紅衣小女孩2、2017)

どちらかというと『神魔対決!魔神仔vs.虎爺』という具合の映画だった。台湾の廟で多く祀られる「虎爺」という神だが、魔神仔に惑わされて山に入った少女の恋人が台中の虎爺廟の童乩(タンキー)という設定で、少女の母(レイニー・ヤン/楊丞琳)から依頼を…

程偉豪『紅い服の少女 第一章 神隠し』(紅衣小女孩、2015)

台湾の山の妖怪「魔神仔(モシナ)」と、登山客の後ろに映り込む赤い服の少女の都市伝説を背景にしたホラー映画。『ザ・ソウル 繋がれる魂』(2021)の程偉豪監督作品。 不動産会社に勤める何志偉(黃河)は祖母と二人暮らしで、真面目な性格ながら、営業成…

クリスチャン・アルバート『ケース39』(Case 39、2010)

児童相談所のケースワーカーのエミリー(レニー・ゼルウィガー)は、多忙な毎日の中、充実感と同時に、子供を虐待する親を自分が権力者として裁いているようだとかすかに感じている。 彼女の担当するケース39の対象児童リリーは、実の両親にオーブンで焼かれ…

M・ナイト・シャマラン『ヴィジット』(The Visit、2015)

ブラムハウス製作のホラー。ジャンプスケアや恐怖を与える映像が直接挿入されるのではなく、ごく普通の生活風景がいちばん怖いというパターン。 初めて会う祖父母の家で一週間過ごす予定の姉弟は、セルフドキュメンタリーを制作しようとカメラとノートパソコ…

クレベール・メンドンサ・フィリオ『バクラウ 地図から消された村』(Bacurau、2019)

80年代風のざらついた映像に、棺桶が業者のトラックから落ちて道端に転がっていたり、突然UFO型のドローンが映り込んだりと、すべての時代が同時に存在するような不思議な幕開け。 取水権をめぐって上流の町と対立しており、武装勢力が辺りに潜伏していると…

ピーター&マイケル・スピエリッグ『ジグソウ:ソウ・レガシー』(Jigsaw、2017)

シリーズ第一作を見ただけで、あとの六作はすべて飛ばして〈レガシー〉を見る。とっくに死んだはずのジグソウが復活し、ゲームによる猟奇殺人が開始される。出て来る人間がことごとく怪しく、誰が犯人であっても不思議はないというパターン。 ゲームの中には…

Andi F. Azzahra、Arfan Sabran『埋立地の漁民』(Silent Blues of the Ocean、2016)

インドネシア・マカッサルの埋め立て工事が、伝統的漁業で暮らしていた人々の生活に与えた影響を追う26分間のショートドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで配信。 asiandocs.co.jp 埋め立て以前の生活の記録映像は挿入されないが、海にアクセスで…

マティス・バン・ヘイニンゲン・Jr.『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(The Thing、2011)

51年版・82年版は共に未見で、原題のあまりのシンプルさにびっくり。エイリアンが出て来る映画だろうという程度の前知識だったが、後半はほぼ極地の基地という孤立した舞台での感染症パニックに展開するのだった。エイリアンの解剖を始めるので、絶対人間に…

Yayo Herrero『マウス -終わらない戦禍-』(The Maus、2017)

父の葬儀のためボスニアに戻ったセルマと、ドイツ人の恋人アレックス。車の故障で森の中に立ち往生した二人は、怪しげな二人組の男と遭遇する。監禁されたカップルの脱出ホラーの要素を交えつつ、意識の暗がりにわだかまる戦争の傷を描く。製作はスペイン。 …

ドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE/デューン 砂の惑星』(Dune、2021)

砂漠の砂から「スパイス」と呼ばれる物質を精製可能な宇宙で唯一の惑星アラキス。その統治を命じられたアトレイデス家は、以前にスパイス貿易で巨利を得ていたハルコンネン男爵が企てる陰謀に巻き込まれる。 アトレイデス家の跡取り息子ポール(ティモシー・…

ジェラルド・ジョンストン『M3GAN』(2023)

ジェームズ・ワンとジェイソン・ブラムの製作、『マリグナント』のアケラ・クーパーの脚本という人形ホラー。 玩具メーカーで開発に従事する独身女性ジェマ(Tinderを使っているところからすると交際相手も今はいない様子)は、両親を失った姪のケイディを引…

ヨハネス・ニーホルム『ココディ・ココダ』(Koko-di Koko-da)

娘の8歳の誕生記念にデンマークを訪れたスウェーデンの夫婦。しかし娘は誕生日の朝、眠っている間に息を引き取っていたのが発見される。3年後、隙間風の吹く夫婦はキャンプに出かけ、不気味な三人組に惨殺されるタイムループに陥る。 「どうして私の水着を忘…

デア・クルムベガスヴィリ『BEGINNING ビギニング』(დასაწყისი、2020)

1986年生まれの女性監督によるジョージア映画。映画.comの配信「世界の奇妙な映画コレクション」では〈恐怖〉との触れ込みで、ホラー映画と勘違いして観たら、テオ・アンゲロプロスや蔡明亮のような長回し映画だった。 cinema.eiga.com エホバの証人の会館で…

永江二朗『きさらぎ駅』(2022)

存在しないはずの「きさらぎ駅」に行ってしまい、元の世界に戻った時には一夜で七年が過ぎていた高校教師。神隠しとして話題になった彼女のもとに、卒論の調査のため大学生が訪れる。 前半は女性の回想で、フィルターのかかった主観映像。ショック・シーンは…

ダリン・スコット『ディープ・ブルー2』(Deep Blue Sea 2、2018)

1999年の第一作からずいぶん間を空けての続編。サメ映画履修4作目。シンギュラリティを前に人類がコンピュータにうち勝つため、知能をブーストする薬を開発しようと試みるマッドサイエンティスト。 zacco-q.hatenablog.com 極秘実験を繰り返し、高い知性と人…

プッティポン・アルンペン『マンタレイ』(Manta Ray/กระเบนราหู、2018)

フィルメックス上映時に観られず、映画.comの配信で鑑賞。 タイの幻想的な劇映画。国境の漁村に漂着したロヒンギャの青年と彼を救った金髪の男。金髪の男は、左胸に傷を負った青年を看護し、一人暮らしの家に住まわせ、共同生活が始まる。ロヒンギャの青年は…

ジャウム・コレット=セラ『ロスト・バケーション』(The Shallows、2016)

『ジョーズ』『ディープ・ブルー』に続きサメ映画の履修は三作目。亡き母が妊娠中に訪れたというメキシコのビーチを一人で訪ねたアメリカ人医学生。サーフィン中にサメに襲われ、干潮時のみ顔を出す岩場に取り残されるという設定。 ファウンド・フッテージの…