スプラッター

エリザベス・バンクス『コカイン・ベア』(2023)

cocainebear.jp 密輸組織が国立公園に落とした大量のコカインを食べたクロクマ。通常なら刺激しない限り人間を襲うことはない、おとなしい熊だそうだが、結婚を控えた善良な登山客だろうが動物保護の専門家だろうが、国立公園のレンジャーだろうが、誰かれ構…

ナ・ホンジン『哭声/コクソン』(곡성、2016)

國村隼が韓国の村人を殺しまくるゴアフィルムかと思って見たら、殺傷シーンやアクションが主眼ではなく、理解できない事態に直面した際に何を「信じる」のかというサスペンスだった。ひとたび因果関係が仮定されると、その後はそれを証拠付けようと試みるば…

ショーン・S・カニンガム『13日の金曜日』(Friday the 13th、1980)

ホッケーマスクの殺人鬼ジェイソンが暴れまくる映画だとばかり思っていたら、一作目はまさかの殺人鬼視点で、終盤まで犯人が明かされない。キャンプ場ではめを外す若い男女の姿が、手持ちカメラで窃視的に映し出される序盤に感嘆。冒頭の1958年の殺人シーン…

デヴィッド・ゴードン・グリーン『ハロウィン KILLS』(Halloween Kills、2021)

『ハロウィン』シリーズの2018年版の続編とのこと。1978年の事件を経て、40年後の2018年、当時の関係者が病院から脱走した殺人鬼ブギーマンことマイケル・マイヤーズと対決したのが2018年版らしい。そちらを見なくても大筋は分かるものの、両作品は完全につ…

フェデ・アルバレス『死霊のはらわた』(Evil Dead、2013)

『ドント・ブリーズ』シリーズのフェデ・アルバレスが、サム・ライミ監督の1981年の同名作品をリメイクしたもの。サム・ライミは脚本と製作に回っている。オリジナルは未見だが、ジャンプスケアや文字通り血の雨が降る派手な演出、そして恐怖というより不快…

永井聡『キャラクター』(2021)

漫画家のアシスタントとして長年働いている山城圭吾(菅田将暉)。画力は抜群だと誰もが認めるが、サスペンスホラーを支えるだけの魅力的なキャラクターが作れないのが欠点。これを最後と決めた持ち込み原稿も断られ、漫画家への道を断念して就職しようと決…

スティーヴン・クォーレ『ファイナル・デッドブリッジ』(Final Destination 5、2011)

直前の予知夢で大惨事からからくも生還したものの、生存者が一人ずつ不幸な偶然の連鎖で死んでゆくシリーズ5作目。高校生が主人公だったこれまでと異なり、社員研修のバスが通過する際に吊り橋が崩落するのが発端。 どうせエンドクレジットまで見ずに客は帰…

ジェームズ・ウォン『ファイナル・デッドコースター』(Final Destination 3、2006)

再びジェームズ・ウォンがメガホンをとった〈ファイナル・デスティネーション〉シリーズ第三作。 事故の模様を幻視した主人公が回避行動を取り、それによって助かったはずの人々が次々にアクシデントに見舞われ……という同じパターンだが、とはいえ小さなミス…

デヴィッド・R・エリス『デッドコースター』(Final Destination 2、2003)

『ファイナル・デスティネーション』シリーズ第二作。第一作での飛行機事故からちょうど一年後。ハイウェイでの玉突き事故を幻視した主人公のキンバリーは、ハイウェイに入る車列を妨害する。予兆の通りに大事故が起こるが、一命をとりとめたはずの男女が順…

タイ・ウェスト『Pearl パール』(Pearl、2022)

『X エックス』シリーズ第二作、老婆パールの若き日を描く。時代背景は『X エックス』の60年前、第一次世界大戦中の1918年で、夫ハワードは出征しており、しかもスペイン風邪の流行中。 happinet-phantom.com 家畜小屋の扉が開いて映画が幕を開けるが、パー…

タイ・ウェスト『X エックス』(X、2022)

3月に読んだホラー映画の女性表象についての批評に、父権的な象徴的秩序をさげすみ転覆する力を持った、近年のホラー映画に表れる「Monstrous feminine」の例として『X エックス』と『Pearl パール』も上がっていた。 theinitium.com ちょうど『Pearl パール…

Rako Prijanto『Para Betina Pengikut Iblis』(2023)

インドネシアのゴア・フィルム。Netflixで英語字幕配信。題名は「悪魔の女信徒たち」とかいう意味のようだ。中身は悪魔と契約した二人の女たちによる、それぞれの復讐のゴア描写が中心。一人は膝の腫れ物で歩けない父の介護に縛り付けられている少女で、家出…

クレベール・メンドンサ・フィリオ『バクラウ 地図から消された村』(Bacurau、2019)

80年代風のざらついた映像に、棺桶が業者のトラックから落ちて道端に転がっていたり、突然UFO型のドローンが映り込んだりと、すべての時代が同時に存在するような不思議な幕開け。 取水権をめぐって上流の町と対立しており、武装勢力が辺りに潜伏していると…

ピーター&マイケル・スピエリッグ『ジグソウ:ソウ・レガシー』(Jigsaw、2017)

シリーズ第一作を見ただけで、あとの六作はすべて飛ばして〈レガシー〉を見る。とっくに死んだはずのジグソウが復活し、ゲームによる猟奇殺人が開始される。出て来る人間がことごとく怪しく、誰が犯人であっても不思議はないというパターン。 ゲームの中には…

ジュリア・デュクルノー『TITANE チタン』(Titane、2021)

車の事故の後、頭蓋骨の手術で右耳の上にチタンプレートを埋め込んだ少女アレクシア。長じてレースクイーンとなった彼女は、自動車と交歓し身ごもることに。 箸形のヘアスティックで髪をまとめるシーンにぞっとするが、果たして予想通りの展開に(「おはしさ…

ニコラス・ペッシェ『ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷』(The Grudge、2020)

『呪怨』のハリウッド・シリーズ作品。『パラノーマル・アクティビティ』は米国から日本に呪いを持ち帰るが、こちらは日本から米国に呪いを持ち帰る話。 黒人と白人、アジア系と白人という世代の異なる二組の夫婦が登場。金婚式目前の夫婦や、出生前診断の結…

ジェームズ・アイザック 『ジェイソンX 13日の金曜日』(Jason X、2001)

何度処刑しても蘇ってくるホッケーマスクの殺人鬼ジェイソン。殺す方法が見つかるまで冷凍処理しようとした女性科学者ローワンは、事故で一緒に冷凍されてしまう。2445年、宇宙船によって回収された二人は解凍されるが…… 女性の登場人物はやたら露出度が高く…

ダニー・キャノン『ラストサマー2』(I Still Know What You Did Last Summer、1998)

1の直接の続作。ジュリーはルームメイトのカーラとその友人2名と、ラジオ番組のクイズで当たったバハマ旅行に出発。シーズン終わりで荒れ模様の海に、孤島となったビーチリゾートを再び殺人鬼が襲う。 ブラジルの首都はリオじゃないだろう、もっと早く気付け…

スコット・スチュワート『レギオン』(Legion、2010)

いかにも善良な老女が歩行器で登場したと思ったら、四つ足で天井を這い回り、人の首を食いちぎる。悪魔憑依ものかと思ったら、黙示録映画だった。機関銃を両手で乱射するマイケルすなわちミカエルはアーミー(神の)出身の軍人。 突然のアイスクリーム販売車…

リー・トーンカム『あるメイドの秘密』(The Maid、2020)

www.netflix.com 英題を同じくする作品がいくつもあるが、これはタイ映画。猿の縫いぐるみに見られている気がするとか、女の姿が見えるとかいう理由でメイドが次々に辞めて居着かない屋敷に雇われた少女ジョイ。 キム・ギヨン『下女』のリメイクと勘違いして…

ジム・ギレスピー『ラストサマー』( I Know What You Did Last Summer、1997)

独立記念日のお祭り騒ぎの中、高校を卒業したばかりの若者四人がドライブ中、山道で男を轢いてしまう。発覚を怖れて死体を海に遺棄するが、翌年になって脅迫状が届き、フィッシャーマンコートの男に一人ずつ襲われるはめに。 多分以前に観たような気がするの…

イーライ・ロス『ホステル』(Hostel、2005)

バックパッカーの若者三人が、「ブラチスラヴァでいい女と遊べる」と紹介されたホステルへ。米・チェコ合作のスプラッター。ショック・シーンまでが長く、その間はふんだんなヌードで引っ張る。 「ガイドブックに載っていない」という誘いの言葉がポイント。…

クリストファー・ランドン『ザ・スイッチ』(Freaky、2020)

序盤はオーソドックスなスラッシャーかと思わせてコメディに。ボディ・ホラーの変種というか、少女が殺人鬼に刺されて肉体を乗っ取られる設定は、『キャット・ピープル』の系譜に位置づけられるのかもしれない。 ナイフで刺されて始まる暴走から、返礼に相手…

クレイグ・ゾベル『ザ・ハント』(The Hunt、2020)

ゴア・フィルムと勘違いして観たが、血糊よりアクションが中心の映画だった。 「人間狩り」設定から、ポリティカル・コレクトネスは口先だけで言行不一致のエグゼクティブや、いわゆる「キャンセル・カルチャー」をネタにするポスト・トゥルース映画。冒頭に…

ロド・サヤゲス『ドント・ブリーズ2』(Don't Breathe 2、2021)

前作と同じ目の見えない元軍人が、今度は養女と暮らしている。行き詰まった都市としてのデトロイト像は続くが、序盤でイラク戦争帰還兵の傷痕がより明確に言及される。 そして相変わらず母性に対して微塵も信頼を寄せない脚本。前作では、娘に対して「どうせ…

フェデ・アルバレス『ドント・ブリーズ』(Don't Breathe、2016)

盗みを繰り返しているデトロイトの若者三人組が、これが最後と盲目の独居老人の家に侵入する。老人はイラクで失明して退役した元軍人、娘を交通事故で失って賠償金を得たので金はあるはず。盲人だって聖人じゃないし! 紅一点のロッキーは小さい頃に父が家を…

シルヴァン・ホワイト『ラストサマー3』(I'll Always Know What You Did Last Summer、2006)

秘密を持った若者たちを、黒いレインコートの漁師が手鉤で殺しに来る。シリーズものだが1・2から独立しているのでこれだけで楽しめる。 舞台はコロラドのスキーリゾート地。閑散期の7月4日に事件は起こる。いまだによく分からない"hillbilly"という語のニュ…

サム・ロー(羅勝)『裏切りの姉妹』(靚湯/Lang Tong、2014)

https://www.netflix.com/jp/title/81036535 シンガポールのホラー。最初の10分で想像がつく通り、女を騙して貢がせて捨てる典型的な「姑爺仔」の主人公が、切り刻まれて肉骨茶になるまでのお話。 最初から華語作品として撮られたようだが、台詞はすべて声優…

Emir Ezwan『Roh』(2019)

https://www.netflix.com/id-en/title/81452171 Netflixで観られるマレーシア・ホラー。人里離れた森に暮らす母子。姉弟は森をさまよう少女に遭遇し、母に話して家に招き入れ、食事を与える。何も語ろうとしない少女は翌朝、戸口で鶏を殺して内臓を貪り、「…

マックG『ザ・ベビーシッター キラークイーン』(The Babysitter: Killer Queen、2020)

www.netflix.com 前作で血みどろの一夜を生き延びたコールの二年後。悪魔崇拝のカルトの話をしても誰にも信じてもらえず、変わり者としてのけ者にされる日々。幼なじみのメラニーから、湖畔で二人きりの週末を過ごそうと誘われ、つい乗ってしまったために再…