エリザベス・バンクス『コカイン・ベア』(2023)

cocainebear.jp

 密輸組織が国立公園に落とした大量のコカインを食べたクロクマ。通常なら刺激しない限り人間を襲うことはない、おとなしい熊だそうだが、結婚を控えた善良な登山客だろうが動物保護の専門家だろうが、国立公園のレンジャーだろうが、誰かれ構わず襲いかかり八つ裂きにする危険な存在に。(しかしアメリカのスプラッター映画の約束として、子供は殺されないのでその点は安心)
 
 コカインを取り戻そうとする密輸組織の構成員たち、彼らをナイフで襲った悪ガキ、母に心配をかけて気を引こうと学校をサボって公園内の滝に出かけたティーンエイジャーとその友人、そして密輸組織を追う警察と、次から次にアホが登場しては惨死するスプラッター・コメディ。
 
 滝に出かけた娘のディディことディアドラを探しに出かけた母(ケリー・ラッセル)は、娘が熊に引きずられていったと聞き、血相を変えて探しに行く。公園の管理事務所にはレンジャーが常駐するが、窓際職らしく、中年の女性レンジャーはほぼ売店のおばちゃん扱い。このレンジャーが、バックヤードで香水を吹きかけて、ちょっと好意を寄せている動物保護官を待つところがかわいい。
 
 『スリザー』で夫が地球外生命体に寄生された女性教師を演じていたエリザベス・バンクスが監督。コカインを大量摂取した熊の話に、父子関係、母娘関係を重ねるという力業。熊の動きは人間の俳優の動きをCG処理しているのだろうが、超高速の部分と「絶対中に人が入ってるだろう」という部分のバランスがよく、つい熊に親しみを持ってしまう危険な作り。

 

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