2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

サタジット・レイ〈探偵フェルダー〉二作

" data-en-clipboard="true"> サタジット・レイ『黄金の城塞』(西岡直樹訳、石踊紘一絵、くもん出版、1991) サタジット・レイ『消えた象神 – ガネーシャ』(西岡直樹訳、山本明比古絵、くもん出版、1993) 映画監督として知られるサタジット・レイが小説を…

ヤン・シュヴァンクマイエル『ファウスト』(Lekce Faust、1995)

ファウスト伝説を脚色した実写映画。チェコの街頭でビラを配る二人組の男。ただ地図に赤い印が付されているだけのその地図を受け取った主人公は、その時は捨てたものの、自宅の郵便受けにも同じものを見出し、その場所に赴くことにする。廃墟のような建物の…

ナ・ホンジン『哭声/コクソン』(곡성、2016)

國村隼が韓国の村人を殺しまくるゴアフィルムかと思って見たら、殺傷シーンやアクションが主眼ではなく、理解できない事態に直面した際に何を「信じる」のかというサスペンスだった。ひとたび因果関係が仮定されると、その後はそれを証拠付けようと試みるば…

ショーン・S・カニンガム『13日の金曜日』(Friday the 13th、1980)

ホッケーマスクの殺人鬼ジェイソンが暴れまくる映画だとばかり思っていたら、一作目はまさかの殺人鬼視点で、終盤まで犯人が明かされない。キャンプ場ではめを外す若い男女の姿が、手持ちカメラで窃視的に映し出される序盤に感嘆。冒頭の1958年の殺人シーン…

ウィリアム・ブレント・ベル『邪悪は宿る』(Separation、2021)

漫画家の夫(ルパート・フレンド)と弁護士事務所で働く妻。夫はかつてヒット作を生んだものの、今や事実上の無職である。妻の父はやり手の弁護士で、妻はそこで働いて一家を養っている。夫の方はいつまでたっても大人になれず、娘の世話どころか、怪我をし…

ジェイミー・ブランクス『ルール』(Urban Legend、1998)

大学内で連続する都市伝説そっくりの殺人事件。若い女性が一人で運転している車の後部座席に男が潜んでいるとか、「電気を点けなくてよかったな」という類の日本でも知られる話が多い。大学寮にも伝説があり、25年前に教授が学生を皆殺しにしたが、大学当局…

オリヴァー・ヒルシュビーゲル『インベージョン』(The Invasion、2007)

" data-en-clipboard="true"> 『es[エス]』の監督による地球外生命体侵略もの。原作はジャック・フィニー『盗まれた街』(1955)である由。ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグら青い目の俳優を集め、色の失われた街で瞳の青が印象的に映る。 米国内…

デヴィッド・ゴードン・グリーン『ハロウィン KILLS』(Halloween Kills、2021)

『ハロウィン』シリーズの2018年版の続編とのこと。1978年の事件を経て、40年後の2018年、当時の関係者が病院から脱走した殺人鬼ブギーマンことマイケル・マイヤーズと対決したのが2018年版らしい。そちらを見なくても大筋は分かるものの、両作品は完全につ…

ペンエーグ・ラッタナルアーン『6IXTYNIN9 シックスティナイン ザ・シリーズ』(2023)

タイの全6話のドラマシリーズ。小包の誤配をきっかけに次々に死者が増えてゆくブラックコメディで、Pen-Ek Ratanaruang 監督が1999年の同名映画をセルフリメイクしたもの。スマートフォンと公衆電話、Windows95あたりが搭載されていそうなレトロなデスクトッ…

アスリ・オザルスラン 『私の心、レイラ』(Dil Leyla、2016)

トルコ東南部の国境近く、クルド人地域の都市ジズレ(Cizre)で、1993年のノウルーズ(正月)の祝いの最中に戦車がやってくる映像から始まる。その街で、2014年に最年少で市長に選出された1987年生まれの女性レイラ・イムレット(Leyla Imret)のドキュメン…

パウル サラハディン レスダル『ダグマ 天国への起爆ボタン』(Dugma: The Button、2016)

シリアのアルカイダ系組織・ヌスラ戦線に参加し、「殉教者」になることを志願したジハーディストたち。一人はサウジアラビア、一人は英国の出身で、大量の爆弾を積載した車輌で政府軍への自爆攻撃を決意している。「ダグマ」とは起爆装置のボタンのことだ。 …

Nizam Razak『メカアマト』(Mechamato、2021-2022)シーズン1

マレーシアの3Dアニメ。少年アマトが、相棒のメカボットとともに、身の回りのモノを「メカナイズ」して悪のロボット(robot jahat)と戦うアクションもの。各話20分程度でエンディングには毎回メカアマト工作コーナーもある。 hatimalaysia.com 上の記事によ…

ザハヴィ・サンジャヴィ『わたしの、幼い息子イマド』(Imad's Childhood、2021)

イラクのヤジディ教徒の村から、ISISに拉致された女性と子供の解放後の日々をめぐるドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズの配信で視聴。二年半にわたる拘束後にようやく解放された母と、二人のまだ幼い息子。父はモスル解放後も消息不明で、子供た…

レオン・リー『人狩り 中国の違法臓器売買』(Human Harvest、2016)

法輪功に対する中国共産党による弾圧を告発するドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズの配信で視聴したが、紹介文には「良心の囚人」とあるのみで、法輪功だと明示されないのが気になる。予告編でも法輪功については言及されていない。 asiandocs.co…

レザ・ファラハマンド『爆薬の耳飾りをつけて』(Women with Gunpowder Earrings、2018)

イラク軍の対ISIS作戦の前線、ほぼ廃墟と化したヤジディ教徒の街コチョ、そしてISISメンバーの家族の収容所を取材する女性ジャーナリスト(Noor Al Helli)。『いつか祖国へ ーIS戦闘員の妻たちー』は主に欧州から単身シリアに渡った女性たちに取材していた…

Alba Sotorra『いつか祖国へ ーIS戦闘員の妻たちー』(The Return:Life After ISIS、2021)

シリア北東部の収容所で、西洋諸国からシリアに渡りISISに加わった女性たちの生を二年にわたって取材したドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズの配信で鑑賞。 asiandocs.co.jp 女性たちの出身国はオランダ、ドイツ、英国、米国、カナダなどで、撮影…

ベン・ウィートリー『MEG ザ・モンスターズ2』(Meg 2: The Trench)

「ピピンの二度目の受難」とサブタイトルをつけたい。ジョン・タートルトーブによる前作の直接の続編で、五年後の設定。テイラー(ジェイソン・ステイサム)は環境活動家として大型船に潜入し、放射性物質の不法投棄の証拠をつかむ。前作のパートナー役だっ…

ジョシュ・フォーブス『アフターデイズ・ボディ 彼女がゾンビと化した世界』(Contracted: Phase II、2015)

『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』(Contracted、2013)の続編だそうだ。サマンサという女性が事故車から飛び出し、実の母親に噛みつくところから始まる。前作はこのサマンサが主役だったそうだが、こちらはサマンサと関係を持ってし…

ジェームズ・デモナコ『パージ』(The Purge、2013)

一年に一晩だけ、すべての犯罪が〈パージ〉として合法化される近未来の米国。富裕層はセキュリティ付きの家に隠れ、貧困層が集中的にリンチの対象となる。しかし年に一度、獣性を解き放つことで、残りの364日の犯罪率は激減、失業率も一パーセントまで低下す…

中田秀夫『リング2』(1999)

『リング』の続編だが、原作小説のある『らせん』とは別の、高橋洋脚本によるオリジナル展開とのこと。主人公は数学科助手の高野舞(中谷美紀)で、教員だった恋人の死の謎を追って呪いのビデオと山村貞子にたどり着く。ざらついた映像で『リング』直系の不…

飯田譲治『らせん』(1998)

鈴木光司原作の映画『リング』(1998)の続編。 小説『らせん』は未読で、短編「空に浮かぶ棺」(『平成怪奇小説傑作集〈2〉』創元推理文庫)のみを読んでおり、高野舞が処女懐胎から出産する話だと思っていた。映画では、死への不安と恐怖に憑かれた男を慰…

ダリオ・アルジェント『サスペリア』(Suspiria、1977)

ドイツを舞台にしたイタリア映画だが、Amazon Prime Video で配信されている字幕版は英語音声のため、何とも奇妙な鑑賞体験となった。 アメリカからドイツのバレエ学校に留学するスージー(ジェシカ・ハーパー)だが、フライブルクに着いた途端に土砂降りと…

佐山剛勇『私の父もそこにいた~証言によるベトナム残留日本兵の存在~』(2018)

インドシナで終戦を迎えた後、ベトミンに協力して独立戦争に参加し、1954年に帰国した残留日本兵。その娘である添野江実子氏が、多くを語らず亡くなった父の足跡を探してベトナムを訪問するドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで配信。 asiandocs.…

中田秀夫『リング』(1998)

見ると七日間で死ぬ呪いのビデオについて取材する浅川(松嶋菜々子)は、自分の姪(竹内結子)の死が関連していたことを知り、調査を進める。 リング 松嶋菜々子 Amazon なぜ突然別れた夫・高山(真田広之)に連絡するのかと思ったら、彼は「視える」人物で…

フェデ・アルバレス『死霊のはらわた』(Evil Dead、2013)

『ドント・ブリーズ』シリーズのフェデ・アルバレスが、サム・ライミ監督の1981年の同名作品をリメイクしたもの。サム・ライミは脚本と製作に回っている。オリジナルは未見だが、ジャンプスケアや文字通り血の雨が降る派手な演出、そして恐怖というより不快…

『自撮りのために』(Selfie Mountain、2019)

15分ほどの短編。アジアンドキュメンタリーズの配信で、特集〈観光公害〉の一本。インドネシア・ジャワ東端にあるイジェン(Ijen)火山。900×600メートルの火口では雄大な火口湖の姿が望め、絶好の撮影ポイントになっている。火口付近への観光客の立ち入りは…

ルル・ワン『フェアウェル』(The Farewell/別告訴她、2019)

NYにひとり暮らししている30歳の作家(志望?)ビリー(碧莉)は、期待をかけたフェローシップの不合格通知が届き落胆する。それと同時に、長春に暮らす父方の祖母がステージⅣの肺癌だと知らされショックを受ける。 中国語タイトルは「彼女に言わないで」。…

ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(The Blair Witch Project、1999)

ファウンド・フッテージホラーの有名作品なので、今さらながら見てみた。後からこの手法はもっと洗練されてきたこともあり、今なら話題になることもなさそうで、先行作の悲哀を感じる。ロケ地はメリーランド州の国立公園である由。ブレアの魔女の伝説を取材…

アニーシュ・チャガンティ『RUN/ラン』(Run、2020)

ダイアン(サラ・ポールソン)は娘のクロエ(キーラ・アレン)と二人暮らし。複数の疾患を抱えて車椅子生活のクロエは、工学に関心を持ち、ホームスクーリングで学びながら大学の合格通知を心待ちにしている。 保護者の集いでは、子供の自立に際して涙ながら…

シルヴァン・ホワイト『スレンダーマン 奴を見たら、終わり』(Slender Man、2018)

ネット上のミーム「スレンダーマン」に、ボディホラーの要素を交えた映画。中学生向けに作られたようで、恐怖描写は控えめだが、画面に映らない部分への妄想をたくましくすると別の側面も見えてくる。 スレンダーマン 奴を見たら、終わり (字幕版) ジョーイ…