ケビン・コルシュ、デニス・ウィドマイヤー『ペット・セメタリー』(Pet Sematary、2019)

 スティーヴン・キング原作。1989年にも映画化されているそうだが、こちらは2019年のバージョン。オープニングは、庭先に停まった車の開いたままのドアから、血痕がポーチを伝って家の中へと続くカット。

 

 

 救急科医師として緊張の続く多忙な生活を送っていたルイスは、自然の中でペースを落として生活しようと、メイン州Ludlowに広大な土地付きの家を買って家族で引っ越す。

 妻のレイチェルは幼い頃、進行性の病気で寝たきりになった姉の存在が恐ろしく、家の中の事故で死なせてしまったことが心に取り憑いて離れない。全身の骨が変形し、ベッドから離れられなくなってしまった姉は、きっと健康な自分を妬み呪っていたはずで、死後もその魂は家の中に残っていると信じている。ルイスはそろそろ九歳になる娘エリーに死についてきちんと説明すべきだと考えるが、レイチェルは死者について娘に聞かれることが耐えられない。

 新居は庭のすぐ先を道路が走っており、猛スピードで長距離トレーラーが疾走する危険な場所であることが分かる。飼い猫も運悪く車にはねられてしまう。

 レイチェルが悲しむことを恐れた夫婦は、猫の死を娘には隠し、いなくなったとだけ告げる。夫が近くのペット墓地に埋葬したはずだったが、やがて猫は戻ってきて……。

 愛する者をあの夜から呼び戻したいという願いが恐怖を呼ぶ「猿の手」型の基本を踏襲している。近所のいかにも怪しい独居老人が、実は心優しい善人と思わせてやっぱり怪しかったというパターンだが、米-カナダ国境地帯の先住民が去った後、その地に棲み続けている「ウェンディゴ」という悪霊が絡んでくる。

 ただし、霊がその姿を直接見せることはないので、クリーチャーものの恐怖映画とは異なり、家族の中に漂うどこか凶暴な気配の不気味さが主だ。

 復讐の連鎖のラストと、フラッシュフォワードのオープニング編集がかなり気に入った(堀井拓磨『なまづま』を連想)。猫のチャーチ(ウィンストン・チャーチルからの命名である由)を演じた長毛種のトラ猫(四匹が出演しているらしい)はかわいいが不気味という猫らしい役回り。ロケ地はカナダ国内のようだ。