台湾

程偉豪『僕と幽霊が家族になった件』( 關於我和鬼變成家人的那件事、2023)

ホモフォビアの警官が、捜査中に赤い封筒を拾ってしまい、ひき逃げ事故で亡くなったゲイの若者と冥婚するはめになる。その晩から若者の幽霊につきまとわれ、さっさと願いをかなえて転生させようと奔走するうち、捜査中の薬物事件のボスとひき逃げ犯の関係が…

王鼎霖『第九分局』(2019)

台湾の人情ホラー映画。冥土の門が開き、死者の帰ってくる鬼月の終わりに公開されたもののようだ。昔の中国では冥界にも官僚制がしかれ現世を鏡に映したように想像されていたが、冥土に閻魔大王のような裁判官がいるなら、その前に警察が捜査を行ってもおか…

莊絢維『人面魚 THE DEVIL FISH』(人面魚:紅衣小女孩外傳、2018)

台湾の都市伝説ホラー〈赤い服の少女〉シリーズ、第三作にして前日譚。人間を山に誘い込む〈魔神仔(モシナ)〉という山怪は、シリーズ第二作で虎の姿の神〈虎爺〉によって鎮められる。その時に神降ろしをし、虎爺を自らに憑依させて戦った若い童乩(タンキ…

程偉豪『紅い服の少女 第二章 真実』(紅衣小女孩2、2017)

どちらかというと『神魔対決!魔神仔vs.虎爺』という具合の映画だった。台湾の廟で多く祀られる「虎爺」という神だが、魔神仔に惑わされて山に入った少女の恋人が台中の虎爺廟の童乩(タンキー)という設定で、少女の母(レイニー・ヤン/楊丞琳)から依頼を…

程偉豪『紅い服の少女 第一章 神隠し』(紅衣小女孩、2015)

台湾の山の妖怪「魔神仔(モシナ)」と、登山客の後ろに映り込む赤い服の少女の都市伝説を背景にしたホラー映画。『ザ・ソウル 繋がれる魂』(2021)の程偉豪監督作品。 不動産会社に勤める何志偉(黃河)は祖母と二人暮らしで、真面目な性格ながら、営業成…

黄威勝・賀照縈『西索米~人の最期に付き添う女たち〜』(西索米-陪他到最後、2018)

asiandocs.co.jp 台湾の短編ドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズの配信で鑑賞。台湾で葬式の際に雇われるマーチングバンド西索米(シソミ)、日本統治期からの習俗だが、15年ほど前*1からはミニスカート姿の女性たちが主流になったという。男性た…

林冠慧『怪奇温泉旅館』(切小金家的旅館、2018)

https://www.netflix.com/jp/title/81034612 ホラーのつもりで見たところ、台湾のアイドル映画だった。『倩女幽魂』ネタがあり、レスリー・チャンの主題歌が引用される。かわいいヤモリたちの鳴き声が鍵になるが、ヤモリの出る台湾映画は初めて観たような気…

陳奕甫『罪の後』(罪後真相、2022)

www.netflix.com 2012年に野球の試合中に球場で起きた女子高生殺人事件。犯人は被害者の恋人で、高校卒業後に一緒に渡米する約束だった野球選手の張正義(陳昊森)。7年後、記者の劉立民(張孝全)が刑務所に取材に行ったところ、張正義の脱獄劇に巻き込まれ…

ロブ・ジャバズ(賈宥廷)『哭悲/THE SADNESS』(2021)

台湾のゴア・フィルム。感染者を残虐行為に走らせるウイルスがある日爆発的な流行を始めた台北。残虐描写の程度というより、地下鉄内の無差別殺人という設定は台湾の観客に現実の事件を想起させるのではないかと、エンドロールに台北市政府や文化局がクレジ…

ニコール・シェーファー『アフリカの少年ブッダ』(Buddha in Africa、2019)

asiandocs.co.jp 台湾の仏教系慈善団体ACC(阿彌陀佛關懷中心)によりマラウィに設立された全寮制の学校を取材したドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズ配信。 台湾の僧侶が創設したACC(Amitofo Care Center)についてはサイトに紹介があり、マラ…

王威翔 『ガールズ・リベンジ』(哈囉少女、2020)

https://www.netflix.com/jp/title/81310261 台湾の学園もの。基隆から台中に転校してきた高校生・允蘅。すぐに親友となったクラスメートは、動画の流出により休学してしまう。允蘅はクイーンビー・可茜による画策だと察し……。 高校のいじめやリベンジポルノ…

廖士涵『縄の呪い2』(馗降:粽邪2、2020)

縄の呪い2 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト 中華圏のホラーでは不祥のものは雲南か東南アジアに端を発すると相場が決まっているが、これはタイで薬物密売人が崇拝するという邪神の話。縊死者が出るとその縄を焼却する「送肉粽」という儀式を行うそ…

奚岳隆『呪われの橋』(女鬼橋、2020)

恋人に裏切られて投身自殺した女子大学生の都市伝説がある大学の橋。深夜0時に橋の階段が一段増え、女の霊が姿を現すという。うるう年の2月28日、肝試し動画を配信した直後に5人の大学生が変死する。4年後、その事件を取材しにカメラマンとキャスターが現場…

王盈舜『台湾 信仰との対話 第2集:神とアッラーと精霊の声(與信仰對話 第二集:聆聽天主、阿拉與靈)』(2018)

asiandocs.co.jp 52分間で台湾のキリスト教、イスラーム、原住民(アミ族)の信仰が次々にフォーカスされる。 最初は台湾唯一のカトリックの村といわれる屏東県万金村。万金聖母聖殿でのミサと、聖像制作者、聖母巡行の神輿が映される。思い出したのは小説『…

徐漢強『返校 言葉が消えた日』(2019)

時代設定は1962年、白色テロの時代の台湾で禁書の読書会を開いていた高校教師と生徒。誰もいなくなった校内に閉じ込められる悪夢が現実の密告事件と交錯する。元になったのがホラーゲームというせいもあってか、前半はジャンプスケア中心のホラーの雰囲気。 …

桃子A1J

blow.streetvoice.com 中国語とベトナム語で歌う台湾のラッパー桃子a1Jのインタビュー記事。 台湾人の父とベトナム人の母の間に生まれた彼女は、11歳までベトナム・ホーチミンで現地校に通い、それから台湾に移って中国語を身につけ、中学卒業後はまたベトナ…

亜細亜の骨『食用人間~トリコジカケの中華料理~』

亜細亜の骨による、超空想科学奇譚『食用人間~トリコジカケの中華料理~』2020年8月2日の公演の映像を観賞。 asianrib.wixsite.com 期間限定無料配信中超空想科学奇譚『食用人間』トリコジカケの中華料理2021年7月1日 0:00 ~ 2021年7月6日23:59 (日本時…

劉育瑄『身為在台灣的新二代,我很害怕』

劉育瑄『身為在台灣的新二代,我很害怕』(台北:創意市集、2020) www.cite.com.tw 電子書籍(Readmoo讀墨電子書)にて。 著者の劉育瑄は刊行当時(2020年10月)22歳、台湾生まれで母がカンボジア出身の広東系華人という「新二代」だ。「新二代」とは、台湾…

徐嘉澤『次の夜明けに』(三須祐介訳、書肆侃侃房、2020)

徐嘉澤(三須祐介訳)『次の夜明けに』(書肆侃侃房、2020)。原題は『下一個天亮』、台湾の二二八事件に始まる白色テロの記憶に始まり、祖父・息子・孫の三世代がそれぞれ台湾現代史を自分の身に引き受けて生きてゆくさまが描かれる連作短篇集。 二二八事件…

程偉豪『ザ・ソウル 繋がれる魂』

Netflixで程偉豪(チェン・ウェイハオ)『ザ・ソウル 繋がれる魂』(2021)。 中国の作家、江波(ジャン・ボー)の短篇小説「移魂有術」を原作とするSF映画で、監督の程偉豪はこれまでにホラー映画『紅衣小女孩』(2015)『紅衣小女孩2』(2017)、スリラー…

開芭樂票(空手形を切る)

「說到做到講信用 這3星座不開芭樂票」(自由時報)という見出し。 news.ltn.com.tw 萌典で「芭樂票」の項目を引いてみると、 空頭支票的俗稱 とある。「空頭支票」は不渡り小切手、空手形、転じて実行されない約束のことだが、どうして「芭樂」(グアバ)小…

王盛弘編『九歌106年散文選』

王盛弘編『九歌106年散文選』(台北:九歌、2018年) 台湾の「散文」という概念は、日本の随筆やエッセイとは必ずしも輪郭が一致しないように思う。台湾の場合、主な文学賞には必ず「散文」の部門が設けられているため、小説や詩歌とあえて区分することが必…

李昂『海峡を渡る幽霊』

李昂(藤井省三訳)『海峡を渡る幽霊』(白水社、2018年) 海峡を渡る幽霊:李昂短篇集 作者: 李昂,藤井省三 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2018/02/17 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 台湾の女性作家、李昂(リー・アン、1…

鄭清文『丘蟻一族』

丘蟻一族 作者: 鄭清文,西田勝 出版社/メーカー: 法政大学出版局 発売日: 2013/09/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 最初は彼らも一点の不安を感ずることがあったかもしれない。時には、ちょっと顔を赤らめたに違いない。しかし、休む間もな…

朱天心『古都』

古都 (新しい台湾の文学) 作者: 朱天心,清水賢一郎 出版社/メーカー: 国書刊行会 発売日: 2000/06/01 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 2回 この商品を含むブログ (3件) を見る 〈新しい台湾の文学〉シリーズの一冊、朱天心『古都』(清水賢一郎訳、国…

台湾セクシュアル・マイノリティ文学[3]『新郎新“夫”』

台湾セクシュアル・マイノリティ文学[3]小説集――『新郎新“夫”』【ほか全六篇】 (台湾セクシュアル・マイノリティ文学 3) 作者: 黄英哲,白水紀子,垂水千恵 出版社/メーカー: 作品社 発売日: 2009/03/28 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 12回 この商品を…

台湾現代小説選Ⅲ『三本足の馬』

三本足の馬 (研文選書―台湾現代小説選 (23)) 作者: 鄭清文,松永正義 出版社/メーカー: 研文出版 発売日: 1985/04 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 鄭清文・李喬・陳映真の三人の小説を一篇ずつ収め、若林正丈による解説「語られはじめた…

坂口䙥子『蕃婦ロポウの話』

それじゃあ、ロポウのノーカンへの初恋は万事終り、可哀想に失恋したね、と私がからかい気味にふざけるとハツエは神妙な面持ちで、そう思うは内地人の心じゃ、内地人という奴は、芋の皮一枚むいたように、すべりのよい面つきばかり最上として、そこへ一点黒…

王禎和ほか『鹿港からきた男』

鹿港(ルーカン)からきた男 (新しい台湾の文学) 作者: 黄春明,宋沢莱,王禎和,王拓,山口守,池上貞子,垂水千恵,三木直大 出版社/メーカー: 国書刊行会 発売日: 2001/07/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 〈新しい台湾の文学〉シリーズの…

ギデンズ・コー『あの頃、君を追いかけた』

あの頃、君を追いかけた[Blu-ray] 出版社/メーカー: マクザム 発売日: 2014/04/04 メディア: Blu-ray この商品を含むブログ (3件) を見る 千葉劇場にて。台湾のベストセラー作家・九把刀の同名小説が原作だが、こちらの翻訳はまだ出ていないようだ(合わせて…