程偉豪『ザ・ソウル 繋がれる魂』

 Netflixで程偉豪(チェン・ウェイハオ)『ザ・ソウル 繋がれる魂』(2021)。

 中国の作家、江波(ジャン・ボー)の短篇小説「移魂有術」を原作とするSF映画で、監督の程偉豪はこれまでにホラー映画『紅衣小女孩』(2015)『紅衣小女孩2』(2017)、スリラー『目撃者』(2017)といったホラー映画やスリラーを手がけている。

 ある実業家が変死体で見つかり、その場には先妻の子と後妻がいたことが判明する。先妻は公私にわたる実業家のパートナーであったが、夫の不倫に悩んだ末に自殺を遂げていた。息子は母の死について父を恨み続けており、母の魂を呼び戻す儀式をしようとしていたらしい。

 先妻の魂が後妻の身体を借りて復活するというオカルトめいた幕開けだが、そこに実業家の会社で実用化しようとしていたRNA修復技術が絡んで事態は思わぬ方向に転がってゆく。

 末期癌の身体を押して捜査に乗り出した検察官の梁文超(張震)は、同僚でもある妻の阿爆(張鈞甯)との間に間もなく初めての子の誕生を迎えようとしているが、日ごとに癌の転移は進んでゆく。RNA修復により延命治療が可能になると知り、治験への参加を希望するが……

 実業家の豪邸は象山だろうか、台北101を望む高みに位置するらしく、低層のバルコニーから台北の夜景が一望できる。台北という舞台は最先端の科学技術というSF的想像と、土俗的なオカルト的世界が重なる都市として、不思議な実感がある。

 その一方で、鍵となる秘密の設定は、同性婚法制化後の台湾映画としては珍しく、むしろ中国での公開を意識したものであるように思われる。また、若い女性が三面鏡に映る全裸の自分の姿に見入る場面があるが、中国で公開されたバージョンではカットされているそうで、そのシーンの意味づけも失われてしまうことになる。「隠さなければならないもの」という前提が、当事者をより孤立させるメッセージにもなりかねないので、台湾ではその前提を自明視しないように製作されることが多いだろう。ただ、中国では状況が異なることを念頭に、それぞれの社会状況に合わせ、どちらの市場でも受けとめられるように工夫した結果なのかもしれない。

原題:緝魂
制作年:2021年
制作国:中国・台湾
時間:130分
言語:華語(普通話)、台湾語
監督:チェン・ウェイハオ(程偉豪/Cheng Wei-hao)
脚本:チェン・ウェイハオ(程偉豪)、金百倫、陳彥齊
製作:楊庭愷
出演: 張震チャン・チェン)、張鈞甯(チャン・チュンニン)、孫安可、李銘順(クリストファー・リーChristopher Lee
撮影:Kartik Vijay
編集:解孟儒

  

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 江波「太陽に別れを告げる日」(大久保洋子訳)収録。

 

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