2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

程偉豪『紅い服の少女 第二章 真実』(紅衣小女孩2、2017)

どちらかというと『神魔対決!魔神仔vs.虎爺』という具合の映画だった。台湾の廟で多く祀られる「虎爺」という神だが、魔神仔に惑わされて山に入った少女の恋人が台中の虎爺廟の童乩(タンキー)という設定で、少女の母(レイニー・ヤン/楊丞琳)から依頼を…

程偉豪『紅い服の少女 第一章 神隠し』(紅衣小女孩、2015)

台湾の山の妖怪「魔神仔(モシナ)」と、登山客の後ろに映り込む赤い服の少女の都市伝説を背景にしたホラー映画。『ザ・ソウル 繋がれる魂』(2021)の程偉豪監督作品。 不動産会社に勤める何志偉(黃河)は祖母と二人暮らしで、真面目な性格ながら、営業成…

クリスチャン・アルバート『ケース39』(Case 39、2010)

児童相談所のケースワーカーのエミリー(レニー・ゼルウィガー)は、多忙な毎日の中、充実感と同時に、子供を虐待する親を自分が権力者として裁いているようだとかすかに感じている。 彼女の担当するケース39の対象児童リリーは、実の両親にオーブンで焼かれ…

M・ナイト・シャマラン『ヴィジット』(The Visit、2015)

ブラムハウス製作のホラー。ジャンプスケアや恐怖を与える映像が直接挿入されるのではなく、ごく普通の生活風景がいちばん怖いというパターン。 初めて会う祖父母の家で一週間過ごす予定の姉弟は、セルフドキュメンタリーを制作しようとカメラとノートパソコ…

マーク・オコネル『トランスヒューマニズム: 人間強化の欲望から不死の夢まで』(松浦俊輔訳、作品社、2018)

原著は2017年。16頁より二箇所をメモ。 われわれが未来に期待を抱くなら――自分たちに未来のようなものがあると思うなら――それは大部分、われわれが自分たちのマシンを通じて達成するものに依拠している。その意味でトランスヒューマニズムとは、われわれが主…

クレベール・メンドンサ・フィリオ『バクラウ 地図から消された村』(Bacurau、2019)

80年代風のざらついた映像に、棺桶が業者のトラックから落ちて道端に転がっていたり、突然UFO型のドローンが映り込んだりと、すべての時代が同時に存在するような不思議な幕開け。 取水権をめぐって上流の町と対立しており、武装勢力が辺りに潜伏していると…

ピーター&マイケル・スピエリッグ『ジグソウ:ソウ・レガシー』(Jigsaw、2017)

シリーズ第一作を見ただけで、あとの六作はすべて飛ばして〈レガシー〉を見る。とっくに死んだはずのジグソウが復活し、ゲームによる猟奇殺人が開始される。出て来る人間がことごとく怪しく、誰が犯人であっても不思議はないというパターン。 ゲームの中には…

Andi F. Azzahra、Arfan Sabran『埋立地の漁民』(Silent Blues of the Ocean、2016)

インドネシア・マカッサルの埋め立て工事が、伝統的漁業で暮らしていた人々の生活に与えた影響を追う26分間のショートドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで配信。 asiandocs.co.jp 埋め立て以前の生活の記録映像は挿入されないが、海にアクセスで…

Taimoor Sobhan『ロヒンギャの夢』(Exodus、2020)

アジアンドキュメンタリーズで配信を鑑賞。バングラデシュの難民キャンプで生活するロヒンギャの人々。Instagram で生活の様子を発信する10代から20代前半の若者3人に取材する23分間のショートドキュメンタリー。製作はタイ。 asiandocs.co.jp 三人がキャン…

マティス・バン・ヘイニンゲン・Jr.『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(The Thing、2011)

51年版・82年版は共に未見で、原題のあまりのシンプルさにびっくり。エイリアンが出て来る映画だろうという程度の前知識だったが、後半はほぼ極地の基地という孤立した舞台での感染症パニックに展開するのだった。エイリアンの解剖を始めるので、絶対人間に…

Yayo Herrero『マウス -終わらない戦禍-』(The Maus、2017)

父の葬儀のためボスニアに戻ったセルマと、ドイツ人の恋人アレックス。車の故障で森の中に立ち往生した二人は、怪しげな二人組の男と遭遇する。監禁されたカップルの脱出ホラーの要素を交えつつ、意識の暗がりにわだかまる戦争の傷を描く。製作はスペイン。 …

ドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE/デューン 砂の惑星』(Dune、2021)

砂漠の砂から「スパイス」と呼ばれる物質を精製可能な宇宙で唯一の惑星アラキス。その統治を命じられたアトレイデス家は、以前にスパイス貿易で巨利を得ていたハルコンネン男爵が企てる陰謀に巻き込まれる。 アトレイデス家の跡取り息子ポール(ティモシー・…

サイ・コン・カム 『ミャンマー鉄道の旅』(Train、2014)

車内の人々を映す20分間の鉄道の旅。アジアンドキュメンタリーズの配信で鑑賞。 asiandocs.co.jp 「ガタンゴトン」というより「カッタン、コットン」とゆったり進む車両は、木の床で窓際に堅いベンチがあるのみの簡素な作り。座席のない車両にはつり革がある…

ビブ・リー 『もう、帰る家がない』(I Don't Feel at Home Anywhere Anymore、2020)

海外から北京に帰省した若い女性の8日間を描く16分間のセルフドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズの配信で鑑賞。台北国際ドキュメンタリー映画祭での中文クレジットはViv LI(李蔚然)『我在家中漸漸消失』。 asiandocs.co.jp テレビの前に座って…

ジェラルド・ジョンストン『M3GAN』(2023)

ジェームズ・ワンとジェイソン・ブラムの製作、『マリグナント』のアケラ・クーパーの脚本という人形ホラー。 玩具メーカーで開発に従事する独身女性ジェマ(Tinderを使っているところからすると交際相手も今はいない様子)は、両親を失った姪のケイディを引…

ヨハネス・ニーホルム『ココディ・ココダ』(Koko-di Koko-da)

娘の8歳の誕生記念にデンマークを訪れたスウェーデンの夫婦。しかし娘は誕生日の朝、眠っている間に息を引き取っていたのが発見される。3年後、隙間風の吹く夫婦はキャンプに出かけ、不気味な三人組に惨殺されるタイムループに陥る。 「どうして私の水着を忘…

イアン・チーニー、シャロン・シャタック『科学者とジェンダー』(Picture a Scientist、2020)

米国の女性科学者が受けてきたジェンダーハラスメントの構造を描くドキュメンタリー。研究成果が奪われるとか性被害を受けるといったような、誰が見ても明らかなハラスメントから一歩進み、もっと無意識の部分での性役割に対する固定観念へと迫ってゆく。 ww…

デア・クルムベガスヴィリ『BEGINNING ビギニング』(დასაწყისი、2020)

1986年生まれの女性監督によるジョージア映画。映画.comの配信「世界の奇妙な映画コレクション」では〈恐怖〉との触れ込みで、ホラー映画と勘違いして観たら、テオ・アンゲロプロスや蔡明亮のような長回し映画だった。 cinema.eiga.com エホバの証人の会館で…

永江二朗『きさらぎ駅』(2022)

存在しないはずの「きさらぎ駅」に行ってしまい、元の世界に戻った時には一夜で七年が過ぎていた高校教師。神隠しとして話題になった彼女のもとに、卒論の調査のため大学生が訪れる。 前半は女性の回想で、フィルターのかかった主観映像。ショック・シーンは…

ダリン・スコット『ディープ・ブルー2』(Deep Blue Sea 2、2018)

1999年の第一作からずいぶん間を空けての続編。サメ映画履修4作目。シンギュラリティを前に人類がコンピュータにうち勝つため、知能をブーストする薬を開発しようと試みるマッドサイエンティスト。 zacco-q.hatenablog.com 極秘実験を繰り返し、高い知性と人…

プッティポン・アルンペン『マンタレイ』(Manta Ray/กระเบนราหู、2018)

フィルメックス上映時に観られず、映画.comの配信で鑑賞。 タイの幻想的な劇映画。国境の漁村に漂着したロヒンギャの青年と彼を救った金髪の男。金髪の男は、左胸に傷を負った青年を看護し、一人暮らしの家に住まわせ、共同生活が始まる。ロヒンギャの青年は…

ジャウム・コレット=セラ『ロスト・バケーション』(The Shallows、2016)

『ジョーズ』『ディープ・ブルー』に続きサメ映画の履修は三作目。亡き母が妊娠中に訪れたというメキシコのビーチを一人で訪ねたアメリカ人医学生。サーフィン中にサメに襲われ、干潮時のみ顔を出す岩場に取り残されるという設定。 ファウンド・フッテージの…

レニー・ハーリン『ディープ・ブルー』 (Deep Blue Sea、1999)

『ジョーズ』に続きサメ映画。船で男たちがサメと戦うのかと思ったら、マッドサイエンティストによって養殖されたサメたちに、研究所が襲われる脱出パニックだった。 クローン羊のドリーがニュースになったのが97年、生命倫理にかかわる現実的な課題が新聞を…

楊雨『1989的女孩』(Children of 1989、2018)

www.youtube.com 天安門事件に参与した民主活動家の娘たち三人に光を当て、米国での生活を取材したドキュメンタリー。2018年の撮影当時、当事者は米国で高校・大学に通っている。生まれたのはみな事件後で、中国で成長したが、父が監視下にあり拘束を繰り返…

黄威勝・賀照縈『西索米~人の最期に付き添う女たち〜』(西索米-陪他到最後、2018)

asiandocs.co.jp 台湾の短編ドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズの配信で鑑賞。台湾で葬式の際に雇われるマーチングバンド西索米(シソミ)、日本統治期からの習俗だが、15年ほど前*1からはミニスカート姿の女性たちが主流になったという。男性た…

スティーヴン・スピルバーグ『ジョーズ』(Jaws、1975)

サメ映画はやはりここからだろうと履修にかかる。スピルバーグ作品も初めてのような。巨大ホオジロザメとの格闘より、サメによる死者が出ているのに、観光収入のために海水浴場の閉鎖が許可されないという危機管理の甘さが恐怖。 サメ退治の大半は、変人の船…

ワフユ・ウタミ『伴侶さがし』(Golek Garwo、2020)

インドネシアの短編ドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで配信。 asiandocs.co.jp 老後の伴侶がほしいとお見合いパーティーに参加する60代の男性。30分間で出会いから結婚式、ハネムーンにその後の生活までを一気に記録する。 身の回りの世話をし…

『狂気と暴走 インドネシアサッカーの苦悩』(Running Amok、2019)

asiandocs.co.jp オーストラリアABC制作の短編ドキュメンタリー(30分弱)。アジアンドキュメンタリーズで配信。 サポーター同士の衝突や他チームサポーターへの集団暴行など、しばしば人命が失われる結果に発展するインドネシアのサッカーリーグ。さらに八…