M・ナイト・シャマラン『ヴィジット』(The Visit、2015)

 ブラムハウス製作のホラー。ジャンプスケアや恐怖を与える映像が直接挿入されるのではなく、ごく普通の生活風景がいちばん怖いというパターン。

 初めて会う祖父母の家で一週間過ごす予定の姉弟は、セルフドキュメンタリーを制作しようとカメラとノートパソコンを持参する。

 母は父との恋愛を反対されて家出してからというもの、祖父母とは連絡を取っていない。おまけに二人の子供が幼いうちに、父は他の女と出奔してしまう始末。13歳の弟はラップにはまり、男らしさを演じているが、実は強迫性障害で不潔恐怖から逃れられない。

 駅に出迎えに来ていた祖父母に連れられて家に着くと、姉弟はすぐに二人と打ち解ける。15歳の姉は、この機会に母にとっての「万能薬(エリクサー)」を撮影しようと試みるが、母の話題を出すと祖父母の様子がおかしくなる。
少しずつ二人の行動に奇妙な点が見え、どうやら夫婦ともに認知症の初期症状を呈しているらしいことが分かる。

 病院で相談員のボランティアをしていたという祖父母のもとには、近所の人が幾度か訪れる。約束があったのに来なかったから心配になって、というのだが、祖父母は来客時には外に出ていて姉弟が応対する。「病院での噂」がほのめかされるが、何なのかは語られない。

 やがて、二人はどうも初期の認知症では済まず、何らかの妄想に囚われて姉弟に危害を加えようとしている気配が濃くなり……。

 母親もふつう子供たちが到着したかどうか、実家に電話くらい入れるだろうと思うが、長年不仲であったことが冒頭で語られ、しかもスカイプで子供たちとはビデオ通話をしているので、その不自然さが巧妙に隠されている。