ドキュメンタリー

イアーラ・リー 『K2 アルピニストの影たち』(K2 and the Invisible Footmen、2015)

パキスタンと中国(新疆ウイグル自治区)国境にそびえる世界で二番目に高い山、K2。世界最高峰のエベレストよりも登頂は困難だとされる山で働くパキスタン人ポーターたちの姿を追う1時間弱のドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズ配信。 asiandocs.c…

エリザ・クバルスカ『K2 天空に触れる』(K2 - Touching the Sky、2015)

『クンバカルナの壁』に続き、エリザ・クバルスカの山岳ドキュメンタリーを溯って観る。登山家として撮影当時18年のキャリアを持っていた彼女は、登山家であることをやめず、同時に母になることができるかと自分に問いかける。アジアンドキュメンタリーズ配…

エリザ・クバルスカ『クンバカルナの壁』(The Wall of Shadows、2022)

『海の遊牧民 バジャウ族』でビーチリゾートを訪れる観光客と地元のバジャウ人の経済格差を描いたエリザ・クバルスカ(Eliza Kubarska)による山岳ドキュメンタリー。代理店を介して経済化される登山ツーリズムの現場が映される。アジアンドキュメンタリーズ…

ドナー・コールマン『トゥクダム 生と死の境界』(Tukdam: Between Worlds、2022)

「トゥクダム」とは冥想中に臨床上の死を迎えながら、姿勢が崩れることもなく死後硬直も起こらず、生きているかのような状態で数日以上経過することをいう。チベット仏教では、冥想中に意識は深みに到達するが、その最深部に下りた微細な意識が肉体に残って…

金華青『仄暗く赤い森』(絳紅森林、2021)

『チベット・ガール』の男性監督・金華青によるドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズ配信。 asiandocs.co.jp zacco-q.hatenablog.com 四川省カンゼ・チベット族自治州白玉県に位置するヤチェン(亜青)寺。尼僧たちは長い冬の間、雪原に一人一室ず…

林麗芳『ツンマ ツンマ ヒマラヤの尼僧たちと過ごした夏』(尊瑪、尊瑪: 我和她們在喜馬拉雅的夏天、2018)

台湾の女性監督によるインドのスピティ(ヒマーチャル・プラデーシュ州)、ラダック、ダラムサラの修道院の取材。監督は50歳を前に思うところあってヒマラヤを旅したというが、自分の解釈を抑制した語りで、修道院の日常生活の細部に丹念に目を向けている。…

金華青『チベット・ガール 翼を求めて』(貢秋卓瑪、The Tibetan Girl、2016)

30分の短編。アジアンドキュメンタリーズ配信。 中国・四川省アバ出身の女性歌手。家族の心配をよそに単身北京に赴くが、信仰と生活が一体となった草原の暮らしとはまったく異なる上、漢族の飲食その他の習慣にも馴染めない。かといって、帰郷しても虚しさか…

マラティ・ラオ『ゲシェマの誕生 ー尼僧院の希望ー』(The Geshema Is Born、2019)

チベット仏教の尼僧たちの姿をインドで取材したドキュメンタリー(クレジットを見るとネパールの尼僧院も撮影に協力しているようだ)。アジアンドキュメンタリーズ配信。 asiandocs.co.jp 「ゲシェ」というのはチベット仏教の学位取得者の称号で、尼僧の場合…

Rob Sixsmith『アイスコールド 殺人とコーヒーとジェシカ・ウォンソ』(Ice Cold: Murder, Coffee and Jessica Wongso、2023)

インドネシアの犯罪ドキュメンタリー。2016年にジャカルタのカフェで Wayan Mirna Salihin という若い女性が急死した。彼女の飲んでいたアイスコーヒーからシアン化物が検出され、状況証拠から一緒にいた友人の Jessica Wongso による毒殺が疑われる。裁判の…

イリス・ザキ『美容室』(Women in Sink、2015)

故郷ハイファで友人フィフィの経営する美容室にカメラを設置し、女たちの髪を洗いながらインタビューする監督。アラブ人キリスト教徒の店だが、ユダヤ人の常連客も多い。ほぼ10年前の撮影だが、第二次インティファーダ以降イスラエル国内に醸成された民族関…

Cassius Michael Kim『Man On The Run』(2023)

マレーシアの1MDBを隠れ蓑にした金融犯罪をめぐるドキュメンタリー。Netflixで配信。 タイトルの「逃亡者」とは、一義的には計画実行と不正に得た金額からして最大の責を負うと思われるジョー・ロウのこと。今なお消息は不明で、捜査関係者の推測では生きて…

イニゴ・ウェストマイヤー『ドラゴン・ガール』(龍之女、Dragon Girls、2022)

少林寺付近に多くある全寮制の武術学校の一つ、塔溝武術学校で訓練を受ける少女たちを追うドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで配信(2024年1月31日まで)。 asiandocs.co.jp 監督 Inigo Westmeier はブリュッセル出身でロシア・ドイツ・米国で学…

潘志琪『天国の庭』(胡阿姨的花園、2022)

坂の街・重慶の「十八梯」は、往時の雰囲気を残す観光地として近年再開発された地区。かつてそこに暮らしていた胡おばさんは敬虔なクリスチャンで、貸金を踏み倒されてゴミ拾いと安宿の経営で生計を立てていた。アジアンドキュメンタリーズで配信(2023年1月…

オルガ・コロトカヤ『トゥバの喉歌』(SING、2018)

アジアンドキュメンタリーズで配信。シベリアに位置し、モンゴルに隣接するトゥバ共和国。女性が喉歌を歌うことは、トゥバ文化への冒瀆として禁忌とみなされており、喉歌を歌う女は子孫繁栄という最大の福を得られないとまでいわれていた。それでも90年代以…

アビー・マーティン『ガザ 自由への闘い』(Gaza Fights For Freedom、2019)

米国のジャーナリストAbby Martinによるドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで視聴。2023年11月29日から無料公開されており、登録すれば全編を見ることができる。 asiandocs.co.jp パレスチナの歴史を簡潔に振り返った上で、2018年からガザのイス…

ジミー・ヘンドリックス 『俺たちは、パンクだ!インドネシアで生きてやる』(A Punk Daydream/Lamunan Oi!、2019)

インドネシア・ベルギー合作のドキュメンタリー。アジアン・ドキュメンタリーの配信で鑑賞。 asiandocs.co.jp 監督 Jimmy Hendrickx はベルギー出身で、2012年からインドネシアに暮らしているらしい。ほかに『A Hong Kong Opera』(2014)などがある。 iffr.c…

チアラ・アヴェサニ & マッテオ・デルボ 『医学生 ガザへ行く』(Erasmus in Gaza、2021)

2021年のドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで配信。 t.co エラスムス計画でイタリア・シエナ大学からガザに留学した医学生。留学中にすべての外国人に対して退去命令が出され、いったんベツレヘムに退避する。 受入先の指導教授やチューターの学…

ダン・ブラガ・ウルベスタッド 『バラナシ 死のホテル』(BY THE RIVER、2020)

サタジット・レイの児童向け小説『消えた象神(ガネーシャ)』(1976)の舞台がバラナシだったので、現在の街の様子をとらえたこのフィルムを観てみた。25分ほどの短編作品。アジアンドキュメンタリーズの配信で鑑賞。 asiandocs.co.jp 音楽を伴い、バラナシ…

アスリ・オザルスラン 『私の心、レイラ』(Dil Leyla、2016)

トルコ東南部の国境近く、クルド人地域の都市ジズレ(Cizre)で、1993年のノウルーズ(正月)の祝いの最中に戦車がやってくる映像から始まる。その街で、2014年に最年少で市長に選出された1987年生まれの女性レイラ・イムレット(Leyla Imret)のドキュメン…

パウル サラハディン レスダル『ダグマ 天国への起爆ボタン』(Dugma: The Button、2016)

シリアのアルカイダ系組織・ヌスラ戦線に参加し、「殉教者」になることを志願したジハーディストたち。一人はサウジアラビア、一人は英国の出身で、大量の爆弾を積載した車輌で政府軍への自爆攻撃を決意している。「ダグマ」とは起爆装置のボタンのことだ。 …

ザハヴィ・サンジャヴィ『わたしの、幼い息子イマド』(Imad's Childhood、2021)

イラクのヤジディ教徒の村から、ISISに拉致された女性と子供の解放後の日々をめぐるドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズの配信で視聴。二年半にわたる拘束後にようやく解放された母と、二人のまだ幼い息子。父はモスル解放後も消息不明で、子供た…

レオン・リー『人狩り 中国の違法臓器売買』(Human Harvest、2016)

法輪功に対する中国共産党による弾圧を告発するドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズの配信で視聴したが、紹介文には「良心の囚人」とあるのみで、法輪功だと明示されないのが気になる。予告編でも法輪功については言及されていない。 asiandocs.co…

レザ・ファラハマンド『爆薬の耳飾りをつけて』(Women with Gunpowder Earrings、2018)

イラク軍の対ISIS作戦の前線、ほぼ廃墟と化したヤジディ教徒の街コチョ、そしてISISメンバーの家族の収容所を取材する女性ジャーナリスト(Noor Al Helli)。『いつか祖国へ ーIS戦闘員の妻たちー』は主に欧州から単身シリアに渡った女性たちに取材していた…

Alba Sotorra『いつか祖国へ ーIS戦闘員の妻たちー』(The Return:Life After ISIS、2021)

シリア北東部の収容所で、西洋諸国からシリアに渡りISISに加わった女性たちの生を二年にわたって取材したドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズの配信で鑑賞。 asiandocs.co.jp 女性たちの出身国はオランダ、ドイツ、英国、米国、カナダなどで、撮影…

佐山剛勇『私の父もそこにいた~証言によるベトナム残留日本兵の存在~』(2018)

インドシナで終戦を迎えた後、ベトミンに協力して独立戦争に参加し、1954年に帰国した残留日本兵。その娘である添野江実子氏が、多くを語らず亡くなった父の足跡を探してベトナムを訪問するドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで配信。 asiandocs.…

『自撮りのために』(Selfie Mountain、2019)

15分ほどの短編。アジアンドキュメンタリーズの配信で、特集〈観光公害〉の一本。インドネシア・ジャワ東端にあるイジェン(Ijen)火山。900×600メートルの火口では雄大な火口湖の姿が望め、絶好の撮影ポイントになっている。火口付近への観光客の立ち入りは…

Andi F. Azzahra、Arfan Sabran『埋立地の漁民』(Silent Blues of the Ocean、2016)

インドネシア・マカッサルの埋め立て工事が、伝統的漁業で暮らしていた人々の生活に与えた影響を追う26分間のショートドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで配信。 asiandocs.co.jp 埋め立て以前の生活の記録映像は挿入されないが、海にアクセスで…

Taimoor Sobhan『ロヒンギャの夢』(Exodus、2020)

アジアンドキュメンタリーズで配信を鑑賞。バングラデシュの難民キャンプで生活するロヒンギャの人々。Instagram で生活の様子を発信する10代から20代前半の若者3人に取材する23分間のショートドキュメンタリー。製作はタイ。 asiandocs.co.jp 三人がキャン…

サイ・コン・カム 『ミャンマー鉄道の旅』(Train、2014)

車内の人々を映す20分間の鉄道の旅。アジアンドキュメンタリーズの配信で鑑賞。 asiandocs.co.jp 「ガタンゴトン」というより「カッタン、コットン」とゆったり進む車両は、木の床で窓際に堅いベンチがあるのみの簡素な作り。座席のない車両にはつり革がある…

ビブ・リー 『もう、帰る家がない』(I Don't Feel at Home Anywhere Anymore、2020)

海外から北京に帰省した若い女性の8日間を描く16分間のセルフドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズの配信で鑑賞。台北国際ドキュメンタリー映画祭での中文クレジットはViv LI(李蔚然)『我在家中漸漸消失』。 asiandocs.co.jp テレビの前に座って…