アビー・マーティン『ガザ 自由への闘い』(Gaza Fights For Freedom、2019)

 米国のジャーナリストAbby Martinによるドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで視聴。2023年11月29日から無料公開されており、登録すれば全編を見ることができる。

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 パレスチナの歴史を簡潔に振り返った上で、2018年からガザのイスラエル国境付近で行われた抗議運動「帰還の大行進」の様子を伝えるドキュメンタリー。2006年の選挙でハマスファタハを破って政権を樹立したことは、イスラエル政府にとってはパレスチナの市民をすべて敵とみなして攻撃を仕掛ける口実となった。

 ガザ地区では爆撃による街の破壊のみならず、飲料水の不足が大きな問題となって生活を脅かしている。医療目的での出境はかつてはほぼ認められていたが、2007年を境に減少、現在は申請しても半分も認められない。早急に治療しないと足を切断しなければならなくなるという男性のケースでは、医師が海外での治療を紹介しても、受入先の病院から拒まれるという。女性の場合、乳癌の適切な治療を受けることも難しく、イスラエル人患者に対してパレスチナでは有意に生存率が低い。

 家族で参加する市民も多かった「帰還の大行進」デモに対し、イスラエル軍は国境の向こうから「防衛」として攻撃を展開した。子供・障害者・ジャーナリストを狙撃したり、ガス弾を使用したりするといった国際条約に反する戦争犯罪であると示される。鉄条網で封鎖された国境に、パレスチナ側から300メートル以内に近付くとイスラエル軍の攻撃対象となるという。パレスチナ人のスリングによる投石は、イスラエル軍にとって何のダメージももたらさないが、狙撃兵によって射殺される。誤射ではなく、攻撃対象に狙いを定め、軍令の下で発射するのであって、狙撃兵が撮影したというビデオ映像には彼らの会話も録音されている。武器を手にしているわけでもなく、ただ立っているだけの少年を故意に狙ったことが分かる。医療従事者の女性も、白衣で救護活動の最中であったにもかかわらず、銃撃によって命を落とした。

 YouTubeでも The Empire Files のチャンネルで全編が公開されているが、武力攻撃の様子や死傷者の映像があるため、年齢制限が設けられ登録ユーザーのみ視聴できる。

youtu.be

 

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