映画

キム・ジウン『箪笥』(장화, 홍련、2003)

韓国のホラー映画リストによく上がる作品『箪笥』をようやく観た。監督は『人狼』のキム・ジウン。導入は屋敷ものだが、だんだんと流産や生理のモチーフが挿入され、ボディホラーの趣を呈してくる。決定的な謎解きに至るまでのサスペンスが巧みで、人間関係…

グレゴリー・プロトキン『パラノーマル・アクティビティ5』(Paranormal Activity: The Ghost Dimension、2015)

シリーズ1・2・3、呪いの印と来て、4は未見で5へ。ケイティとクリスティの姉妹の幼少期を描いたシリーズ3に接続している。 少女リーラと父母が引っ越して来るところから始まる。クリスマスを迎え、父の弟がやって来て長逗留することに。そこに前の住人が残し…

ウェス・アンダーソン『奇才ヘンリー・シュガーの物語』(Roald Dahl's The Wonderful Story of Henry Sugar、2023)

ロアルド・ダール原作の短篇から四つを短篇映画シリーズにしたもの。邦題は『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』とも。動きを最小限にした演劇的な構成で、いずれも作家自身が途中で顔を出し、執筆中の書斎から観客に語りかける。 『奇才ヘンリー・シュガ…

ケビン・コルシュ、デニス・ウィドマイヤー『ペット・セメタリー』(Pet Sematary、2019)

スティーヴン・キング原作。1989年にも映画化されているそうだが、こちらは2019年のバージョン。オープニングは、庭先に停まった車の開いたままのドアから、血痕がポーチを伝って家の中へと続くカット。 ペット・セメタリー (2019) (字幕版) ジェイソン クラ…

ペマ・ツェテン『羊飼いと風船』(氣球、2019)

監督自身の漢語小説を原作とするチベット語映画。漢語の台詞は風船を買うわずかなやりとりのみで、エンドロールもすべてチベット語(+英語)。チベット語の世界を漢語で文章にすることを最初の翻訳とすれば、映画はチベット語の音と風景への再翻訳といえる…

リー・クローニン『死霊のはらわた ライジング』(Evil Dead Rise、2023)

これは設定が邪悪すぎる。湖畔の山小屋で悪魔に襲われる若者たちの話と思いきや、それはまくらに過ぎず、メインはその前日に悪魔を呼び出してしまった一家の惨劇だ。 妊娠に気付いた妹は、長く疎遠だった姉の家を訪ねる。しかしタトゥーアーティストの姉は離…

Nizam Abd Razak『メカアマト MOVIE』(Mechamato Movie、2022)

劇場版メカアマト、日本では吹き替え版のみの上映。公開最終日に劇場で鑑賞。(グッズはメカボット*1のマグネットを買って大変満足した) アニメシリーズの前日譚としてアマトとメカボットの出会い、そして街のヒーロー「メカアマト」の誕生までが描かれる。…

ジェームズ・ワン『アクアマン』(Aquaman、2018)

アーサー(ジェイソン・モモア)は、海底のアトランティス帝国の女王(ニコール・キッドマン)と人間の灯台守との間に生まれ、水陸両方で自在に活動できる。父子は海底の政争のために連れ戻された母の帰還を待つが、やがて彼女は処刑されたと知らされる。 は…

クリストファー・ランドン『パラノーマル・アクティビティ/呪いの印』(Paranormal Activity: The Marked Ones、2014)

『パラノーマル・アクティビティ』シリーズ第4作。ケイティとクリスティの姉妹をめぐる3作目までの物語からいったん離れ、メキシコ系のコミュニティへと舞台は移る。定点カメラではなく小型の手持ちカメラでの撮影へと変化。 主人公ジェシーの高校の卒業式か…

アニーシュ・チャガンティ『search サーチ』(Searching、2018)

『RUN/ラン』のアニーシュ・チャガンティ監督作品。失踪した娘の手がかりを求め、父親が必死で娘のノートパソコンの履歴を調べるサスペンス。画面に映し出されるのは、すべてFaceTimeの通話やSNS画像、ウェブサイトにニュース動画という画面内カメラを通した…

パーカー・フィン『Smile スマイル』(Smile、2022)』

精神的な問題を抱える女性を主人公にするホラー映画では、以前に依存症を描いた『エンドレス・エクソシズム』を見たが、こちらは自死遺族のトラウマに焦点を当てた作品。 精神科救急医療を担当している医師のローズ(ソシー・ベーコン)の元に、脅えきった若…

リドリー・スコット『エイリアン』(Alien、1979)

ボディ・ホラーの文脈でよく聞くものの、見たことはなかったので初めて配信で鑑賞。 エイリアンに襲われるシーンより、規定のプロトコルを自己判断で無視し、さらに乗組員間の連携を失うという事故発生の経緯の方がむしろ恐ろしい。そしてリプリー(シガニー…

ユン・ジュンヒョン『トンソン荘事件の記録』(마루이 비디오、2023)

舞台は釜山。1992年、旅館〈トンソン荘〉で若者が恋人を殺害する事件が起こった。犯人はその一部始終を撮影していたが、検察庁に保管されているそのビデオテープには、ありえないものが映っているという噂がある。2019年、取材班がその映像について調べる過…

エリザベス・バンクス『コカイン・ベア』(2023)

cocainebear.jp 密輸組織が国立公園に落とした大量のコカインを食べたクロクマ。通常なら刺激しない限り人間を襲うことはない、おとなしい熊だそうだが、結婚を控えた善良な登山客だろうが動物保護の専門家だろうが、国立公園のレンジャーだろうが、誰かれ構…

ジェームズ・ガン『スリザー』(Slither、2006)

" data-en-clipboard="true"> 米国の田舎町郊外の森に隕石が墜落。そこに付着していた地球外生命体が孵化し……。 地球外生命体に寄生されると、ペニスを思わせる触手が腹から生え、それを女の腹に突き刺すことで授精するという設定。同じようなパターンだしも…

上田慎一郎『カメラを止めるな!』(2017)

浄水場跡地の廃墟でゾンビ映画を撮影するチームを、本物のゾンビが襲う。しかし「本物」に憑かれた監督は、俳優やスタッフが惨殺される中、カメラを回し続け……。カメラのレンズについた血しぶきを拭き取る手や、「ちょっとカメラ本当に止めて!」とカメラマ…

ヤン・シュヴァンクマイエル『ファウスト』(Lekce Faust、1995)

ファウスト伝説を脚色した実写映画。チェコの街頭でビラを配る二人組の男。ただ地図に赤い印が付されているだけのその地図を受け取った主人公は、その時は捨てたものの、自宅の郵便受けにも同じものを見出し、その場所に赴くことにする。廃墟のような建物の…

ナ・ホンジン『哭声/コクソン』(곡성、2016)

國村隼が韓国の村人を殺しまくるゴアフィルムかと思って見たら、殺傷シーンやアクションが主眼ではなく、理解できない事態に直面した際に何を「信じる」のかというサスペンスだった。ひとたび因果関係が仮定されると、その後はそれを証拠付けようと試みるば…

ショーン・S・カニンガム『13日の金曜日』(Friday the 13th、1980)

ホッケーマスクの殺人鬼ジェイソンが暴れまくる映画だとばかり思っていたら、一作目はまさかの殺人鬼視点で、終盤まで犯人が明かされない。キャンプ場ではめを外す若い男女の姿が、手持ちカメラで窃視的に映し出される序盤に感嘆。冒頭の1958年の殺人シーン…

ウィリアム・ブレント・ベル『邪悪は宿る』(Separation、2021)

漫画家の夫(ルパート・フレンド)と弁護士事務所で働く妻。夫はかつてヒット作を生んだものの、今や事実上の無職である。妻の父はやり手の弁護士で、妻はそこで働いて一家を養っている。夫の方はいつまでたっても大人になれず、娘の世話どころか、怪我をし…

ジェイミー・ブランクス『ルール』(Urban Legend、1998)

大学内で連続する都市伝説そっくりの殺人事件。若い女性が一人で運転している車の後部座席に男が潜んでいるとか、「電気を点けなくてよかったな」という類の日本でも知られる話が多い。大学寮にも伝説があり、25年前に教授が学生を皆殺しにしたが、大学当局…

オリヴァー・ヒルシュビーゲル『インベージョン』(The Invasion、2007)

" data-en-clipboard="true"> 『es[エス]』の監督による地球外生命体侵略もの。原作はジャック・フィニー『盗まれた街』(1955)である由。ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグら青い目の俳優を集め、色の失われた街で瞳の青が印象的に映る。 米国内…

デヴィッド・ゴードン・グリーン『ハロウィン KILLS』(Halloween Kills、2021)

『ハロウィン』シリーズの2018年版の続編とのこと。1978年の事件を経て、40年後の2018年、当時の関係者が病院から脱走した殺人鬼ブギーマンことマイケル・マイヤーズと対決したのが2018年版らしい。そちらを見なくても大筋は分かるものの、両作品は完全につ…

ベン・ウィートリー『MEG ザ・モンスターズ2』(Meg 2: The Trench)

「ピピンの二度目の受難」とサブタイトルをつけたい。ジョン・タートルトーブによる前作の直接の続編で、五年後の設定。テイラー(ジェイソン・ステイサム)は環境活動家として大型船に潜入し、放射性物質の不法投棄の証拠をつかむ。前作のパートナー役だっ…

ジョシュ・フォーブス『アフターデイズ・ボディ 彼女がゾンビと化した世界』(Contracted: Phase II、2015)

『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』(Contracted、2013)の続編だそうだ。サマンサという女性が事故車から飛び出し、実の母親に噛みつくところから始まる。前作はこのサマンサが主役だったそうだが、こちらはサマンサと関係を持ってし…

ジェームズ・デモナコ『パージ』(The Purge、2013)

一年に一晩だけ、すべての犯罪が〈パージ〉として合法化される近未来の米国。富裕層はセキュリティ付きの家に隠れ、貧困層が集中的にリンチの対象となる。しかし年に一度、獣性を解き放つことで、残りの364日の犯罪率は激減、失業率も一パーセントまで低下す…

中田秀夫『リング2』(1999)

『リング』の続編だが、原作小説のある『らせん』とは別の、高橋洋脚本によるオリジナル展開とのこと。主人公は数学科助手の高野舞(中谷美紀)で、教員だった恋人の死の謎を追って呪いのビデオと山村貞子にたどり着く。ざらついた映像で『リング』直系の不…

飯田譲治『らせん』(1998)

鈴木光司原作の映画『リング』(1998)の続編。 小説『らせん』は未読で、短編「空に浮かぶ棺」(『平成怪奇小説傑作集〈2〉』創元推理文庫)のみを読んでおり、高野舞が処女懐胎から出産する話だと思っていた。映画では、死への不安と恐怖に憑かれた男を慰…

ダリオ・アルジェント『サスペリア』(Suspiria、1977)

ドイツを舞台にしたイタリア映画だが、Amazon Prime Video で配信されている字幕版は英語音声のため、何とも奇妙な鑑賞体験となった。 アメリカからドイツのバレエ学校に留学するスージー(ジェシカ・ハーパー)だが、フライブルクに着いた途端に土砂降りと…

中田秀夫『リング』(1998)

見ると七日間で死ぬ呪いのビデオについて取材する浅川(松嶋菜々子)は、自分の姪(竹内結子)の死が関連していたことを知り、調査を進める。 リング 松嶋菜々子 Amazon なぜ突然別れた夫・高山(真田広之)に連絡するのかと思ったら、彼は「視える」人物で…