アニーシュ・チャガンティ『search サーチ』(Searching、2018)

 『RUN/ラン』のアニーシュ・チャガンティ監督作品。失踪した娘の手がかりを求め、父親が必死で娘のノートパソコンの履歴を調べるサスペンス。画面に映し出されるのは、すべてFaceTimeの通話やSNS画像、ウェブサイトにニュース動画という画面内カメラを通した映像のみだ。

 主人公は韓国系アメリカ人のデイヴィッド・キム(ジョン・チョー)。同じく韓国系の妻パムとの間に娘マーゴをもうけ、幸福に暮らしていたが、妻はリンパ腫を患い早逝してしまう。それ以来、デイヴィッドはできるだけ妻の話題を避けるように過ごしてきた。

 友達の家で勉強会をするといって出かけた娘は、そのまま帰宅せず連絡もつかなくなってしまう。心配した父は娘の友人に問い合わせようとするが、娘の交友関係もその連絡先も一切知らなかったことに気付き、愕然とする。結局、通報して失踪届を出したものの、なかなか手がかりが見つからない。幸い捜査主任の女性刑事ヴィック(デブラ・メッシング)は、自分も思春期の息子を持つ母親で、親身になってくれるものの……。

 カリフォルニアが舞台で、家族三人と主人公の弟はアジア系キャストだが、娘の級友役には誰もアジア系はいない。学校でもどうやらあまり親しい友人はいなかったらしく、ランチも毎日一人で取っていたと知らされて父は衝撃を受ける。しかも、娘はひそかに新たな偽造の身分証を入手しており、家出の準備をしていた痕跡まで見つかる。だが父の目に映る娘は、そんなことをするような子供ではないはずなのだ。

 疑心暗鬼になった父は、オンラインでの事件の反応までチェックし続けるようになる。たいして親しくなかったと言った筈の友人が、「彼女は親友だったから本当に心配」などと涙ながらに語る動画をアップしてアクセス数や好感度を稼いだり、家庭の問題だとして父親の責任に帰す自称有識者の放言や中傷コメントが相次いだり、あげくにはダイレクトメールで葬儀のオンライン中継を売り込もうとするメモリアルサービスまで出現する始末。このあたりはかなり現実感のあるオンラインホラーになっている。

 パソコン画面で完結するため、音声で十分だと思われる場面でも無駄にFaceTime通話が続いたり、Web検索の間も自分の顔を内蔵カメラで画面に映しっぱなしだったり、ややわざとらしい部分は残るものの、その分画面に映らずデジタル化されない出来事を想像させるようになっている。デジタル履歴を解析すればたいていの出来事は分かってしまいそうなものなのに、意外と見つからないところに、ファウンド・フッテージものとはまた毛色の違う面白さがあった。

 

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