キム・グァンビン『クローゼット』(클로젯、2020)

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IMF危機後の1998年、お祓いの最中に手にした匕首が激しく反応し、ムーダンがクローゼットの前で喉をかき切る映像から始まる。時は転じて現在、父と娘の新居から、忽然と娘の姿が消える。 

『釜山行』と並んで、娘と意思疎通のできない父親の話。ゾンビや幽霊に襲われない限り、仕事に逃げ続ける韓国の父親族の後ろめたさの反映? 父娘二人だけで親類縁者がまったく登場しないのは気になるところ。

娘を「親戚の家にしばらく預ける」といった選択肢が出てこないのは、夫も亡くなった妻も一人っ子だったり地方の出身だったりして頼れる身内が皆無なのだろうか。幽霊はというと、特定の屋敷のクローゼットに出現するのではなく、親に見捨てられた子がいればどこにでも現れる模様。

ハ・ジョンウが出るからコメディ・ホラーかと思ったが、予想より怖がらせに来るタイプの映画だった。キム・ナムギルとの「『神と共に』にあるでしょ?」「見てない」「つまんないなあ」というくすぐりも。

主人公が精神症状に悩まされており、カメラに映るのが映画内現実か幻覚か分からない、というのはホラーの常套だろうが、パニック発作を誘発することで霊界へというパターンは初めて見た。発作と向き合うことで娘を救うというプロットは、フィクションとしてはともかく、実際の発作の機制はそういうものではないのではと思うが……


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