ヨン・サンホ『新感染 ファイナル・エクスプレス』(釜山行、2016)

https://www.netflix.com/jp/title/80117824

 

走行中の高速鉄道車内で乗客がゾンビ化してゆくパニック映画。2022年の今となっては、感染者の排除が映画の出来事ではなく現実に見聞きしたものとなってしまった。

鼻持ちならないファンド・マネージャー(コン・ユ)と、輪を掛けて利己的なバス会社の常務、気の良い労働者風の男(マ・ドンソク)がゾンビの発生した車中に乗り合わせる。

別居中の妻に会いたがる娘を連れて乗車したファンド・マネージャーは、仕事に追われて娘と過ごす時間はごくわずか。誕生プレゼントも、自分がすでに贈ったのを忘れて同じものを買う体たらく。年配の女性に席を譲る娘に、「そんなことしなくていい」と言って聞かせる。

この男が娘との絆を取り戻し、利他の精神を学ぶのかというのが一つの見どころで、同時に格差社会の諸相が車内に凝縮される。あらゆる階層の人間が一緒くたになる場として、今でも鉄道は有効なのだ。

男たちが身を挺して女子供を守るというパターンはもう過去のものになりつつあるのだろうが、その中にも、「いつも他人のことばかり気にしていた」中年姉妹による、金と権力のある男が幅を利かせる社会への復讐が描かれているのは見せ場。

ところで、日本の新幹線はドアがぴったり閉まらないと発車できない設計のはずだが、韓国のKTXは現実にもドア全開で走れるのか? 一定以下の速度ではドアロックが解除可能なシステムなのだろうか。