ジョン・エリック・ドゥードル『REC:レック/ザ・クアランティン』(Quarantine、2008)

 夜勤の消防士を取材に来た女性レポーターのアンジェラと男性カメラマンのスコット。このカメラの映像によるPOVホラー。

 舞台はロサンゼルス、救急車の8割は消防署から出動し、消防士は緊急救命士の資格も持っていると取材に答える。日本の観客からすると、救急車というのは消防局の管轄に決まっているだろうと思うが、レポーターは驚いてみせる。むしろロサンゼルスの救急車の残りの2割はどこの所属なのかが知りたい。

 そうするうちに通報が入り、出動する消防車に同乗して取材に行く二人。通報内容は、アパートの上階でひとり暮らしの老女が聞いたことがないような奇声を発しているというもの。先に着いていた警察と、転倒して怪我でもしたかと部屋に入ってみると、パニック状態の老女がいる。口から胸にかけて血まみれだ。消防士と警察官が、彼女を落ち着かせようと声をかけるが、突然老女は警察官に飛びかかって喉笛を食いちぎる。警察と消防に救援を要請、全戸に避難を呼びかけるが、なんと入口は外から封鎖されていた。

 ひたすらゾンビから逃げる映画かと思いきや、知らないうちに自分たちが感染源として隔離の対象となっていたというパターンのパンデミック映画。外との通信手段も断たれ、何が起きているのか分からない。咬まれると感染するのでゾンビとパターンは同じだが、殺せば死ぬ点が違う。

 たまたま住民に獣医がおり、症状から狂犬病を疑う。発症したら治療法はなく、ただ死を待つのみ。しかし、狂犬病にしては潜伏期間が短すぎ、咬傷を負ってすぐに発症する上、ヒト-ヒト感染するという厄介さ。ようやく防護服姿のCDC職員が到着し、感染者の脳のサンプルを採取しようとするが、逆に咬まれるはめに。

 住民にはアフリカ系のほとんど英語を解さない夫婦と、同居の寝たきりの父(登場しない)もいるのだが、何が起こっているのかまったく訳が分からない状況で、とにかく一階に集まるよう指示され、そのまま放置されるこの夫婦が一番気の毒だ。

 全戸の住民調査が行われるが、天井裏の住人は何か月も見ていないと大家が答える。当然ながらウイルスの発生源はその部屋である。

 レポーターとカメラマンは公私ともにパートナーで、カメラマンの姿はほとんど映らないが、黒人男性だと分かる。レポーターは白人女性というカップル。

 最後はだんだんと、この状況でカメラを構えている場合かと作為が目立ってくるのだが、ライトが壊されて暗視モードに切り換えることで、カメラを回す必然性が担保されている。

 屋根裏部屋には、カルト信者が研究所から生物兵器を持ち出したという記事が貼られているが、現実にそんな事件が起きたら、報道されるどころか流出の事実も含めひた隠しにされるのでは。しかし潜伏期間がごく短い上に、致死率100パーセントでは、流行する前に感染者が死に絶えてしまい、生物兵器としてはあまり役に立たないような気がする。閣僚会議の前日あたりに、大統領公邸の愛玩犬に感染させるというようなピンポイントの使い方くらいしか思い付かない。

 スペイン映画『REC/レック』のハリウッドリメイクとのこと。

 

REC/レック

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