ジョシュ・フォーブス『アフターデイズ・ボディ 彼女がゾンビと化した世界』(Contracted: Phase II、2015)

 『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』(Contracted、2013)の続編だそうだ。サマンサという女性が事故車から飛び出し、実の母親に噛みつくところから始まる。前作はこのサマンサが主役だったそうだが、こちらはサマンサと関係を持ってしまったライリーという男が主人公。

 生物兵器によるテロの話だが、BJというテロリストは自身がキャリアとなって女たちを強姦し感染させるという悪質な手口を使う。空気感染はしないようなので、血液への接触のほか、キスや同じ器の回し飲みなどに注意すれば済むのだが、感染した主人公があちこちで血を流して歩くので冷や冷やする。感染から発症までの潜伏期間はとても短く、発症者の致死率は100パーセントという設定。

 

 

 このウイルスに感染すると皮膚の下を芋虫が這い回るようになり、目が充血して最後には眼球が飛び出す。恐怖というより嫌悪感を強く揺さぶる。ライリーは薬物依存症の相談所に勤務しているが、初期症状は薬物による幻覚と重なるのがポイントだろう。心停止が確認されてからもなお体を起こし、人間を視界に捉えると飛びかかってかじりつく。

 だが、ゾンビ・パニックというより、主人公が性交渉後に感染の不安にとらわれるパートがかなり長い。体に虫が這うところから、鼻血、血尿と粘液を垂らすようになり、美しかった女たちと同様におぞましいものへと変貌してゆく。性行為やキスの後で、女たちが全身から血を流し不気味な存在に変わってゆく描写や、女性警察官がパニックを起こして犯人に命乞いをするくだり、さらに犯人に犯されたサマンサには同性の恋人がいたことなど、女性嫌悪がちらつく部分もある。興味深いのは、フラッシュバックする(たぶん前作の)性交シーンが、女の陰部から大量の芋虫がわいてくる不快な記憶として描かれる点だろう。深読みすれば、性行為そのものの根源的なおぞましさを視覚化したものでもあるようだし、男の側から性病への恐怖に光を当てることを通じて、女の側の妊娠への不安を浮き彫りにしているようでもある。主人公の姉が妊娠中だという設定と、最後に腹の中で胎児が蠕動する気配が、さらなる恐怖を呼ぶ。