Rizal Mantovani『Kuntilanak 3』(2022)

 Amazon Prime Videoで鑑賞。日本語字幕はないが、英語・中国語は配信されている。

 『クンティラナック: 鏡の中の幽霊』の続編にあたる。里子となった屋敷でアンティークの鏡の中から出現したクンティラナックを倒したディンダ(Nicole Rossi)。
その後、怒りや恐怖を感じた際に、物体を移動する力が発現することに気付く。しかしある日、お化けのふりをして脅かそうとした兄妹を誤って攻撃してしまい、怪我を負わせる。自責の念にかられたディンダは、超能力を備えた子供を集めて教育する寄宿舎学校への進学を望む。

 

 

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 インドネシアハリー・ポッターのような学校だが、教わるのは自分の力をコントロールして黒い力を白魔術に変える方法だ。ディンダは自分がそこでは「フリーク」ではなく普通だと気付き、解放された気持ちになる。

 ところが、創立者の未亡人(Sara Wijayanto)は、ディンダが特別な魔力を備えた一族の末裔で、さらにクンティラナックを退治したことでその力を強めていることに気付き、彼女に目を付ける。実は、老いて弱った身体を人前に見せず暮らしている彼女は、クンティラナックに身体を貸し与えることでその力を得、超能力を備えた子供の精気を吸い取ることで一年ずつ寿命を延ばしていたのだった。

 寄宿舎学校で何人もの子供が行方不明になっているというニュースを発見したディンダの兄弟は、彼女を連れ戻しに学園に潜入する。
ディンダの力を吸い取る儀式を準備する未亡人たちと、それを見抜いて対抗する超能力者の教師たちの魔法バトルが始まる。

 最後に、ディンダがクンティラナックの歌を歌い、寄生した肉体からクンティラナックを引き剥がして弱体化させ、創立者の遺したクリス(蛇状に曲がった短剣)で両者を片付けてめでたしめでたし。

 クンティラナックは今回は美しい女性の姿には化けず、最初から骨と皮ばかりの手に長い爪を伸ばした化物として造形される。触手のようにうねる長い髪に覆われて首から下は見えないが、どうも抜け首妖怪に腕がついた形状のようだ。内臓を引きずっているわけではない。

 妊娠や出産と関係する女霊としての性質には言及されず、子供を狙う悪霊として描かれている。主眼は超能力を秘めたディンダの成長物語にあり、『キャリー』が大人たちに見守られて力を伸ばしていたらディンダのようなハッピーエンドを迎えていたかもしれないと思わせる。『キャリー』のように初潮が契機になるような仕掛けはされていないものの、登場する超能力少女たちが10代前半であることは偶然ではないだろう。
『ザ・ドール』シリーズで除霊師ララスを演じたSara Wijayantoが今回は悪役。

 学園の前にはpohon gantung(吊す木)と呼ばれる大木が立っている。太い気根が垂れた熱帯樹だが、種類は分からない。中国語字幕では「上吊樹(首縊りの樹)」という物騒な名称だが、夜になるといくつもの死体がぶら下がっているのが見える。この樹の秘密は劇中では明かされないが、ディンダがクリスの力で木を生やし、その木から無数の矢のように飛ぶ枝でクンティラナックを退治しているので、何か創立者にちなんだ設定があるのかもしれない。

 ラストに続編『サマンサ』の制作が予告されるが、これは2006年のオリジナルシリーズの主人公の名前なので、関連する話になるようだ。