シッティシリ・モンコンシリ『呪いのキス -哀しき少女の恋-』(Krasue: Inhuman Kiss, 2019)

https://www.netflix.com/jp/title/81093122

タイのホラー映画。バンコク空襲の頃、近郊の村では抜け首妖怪ガスーの噂が飛び交い、これまでにガスーを退治してきたという男たちが村にやって来る。

東南アジアの抜け首は、首から内臓を垂らした姿で伝えられるが、この映画では無数の触手として造形される。ヴァギナ・デンタタや魔女狩り映画と思わせて、ガスーの正体を知りつつ彼女を愛し続けるというラブロマンスに着地。

幾世も繰り返しガスーとなる女たちの物語でもあるが、タイ妖怪映画のお約束、最後は僧侶が解決するというパターンは踏襲されている。僧侶とガスーとの俗世の因縁はともかく、袈裟をまとって銃をぶっ放す画たるや、え、物理攻撃なの?!

首が発光して浮遊する様子と、腐葉土からガスを発生させて鬼火を作るシーンもあるが、災厄が樹上高く天から降りてくるイメージで共通する。劇中ではバンコク空襲の直接の描写はないが、空から戦火が迫る恐怖は妖怪の姿を借りて表象されているのだろう。


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