ジェイコブ・チェイス『ラリー スマホの中に棲むモノ』(Come Play、2020)

子供のスマートフォンに突然絵本が表示される。他人と違うためにいつも仲間はずれにされて寂しい怪物のラリーが「おいで、友達になろう」と語るページをめくるうち、家中の電球が切れ……。

オリヴァーは小学校低学年の自閉症児で、周囲の言葉や自分に対する語りかけは理解しているが、話しことばを持たず、アプリで単語カードをタップして意思を伝える。周囲の子供は、一人だけ授業中のアプリ使用が許されているオリヴァーを妬み、以前に仲良しだった友達まで彼をのけ者にする。

孤独から生まれたという怪物は、インターネット空間から現実を侵蝕するが、肉眼では見ることができず、スマートフォンのレンズ越しにしか姿を捉えられないというポケモン仕様(?)。社交の機会を増やすようにと勧められているオリヴァーより、本当に友達を必要としていたのは母の方だったのかもしれない。

ちょっと気になったのは、「そのままのあなたを愛している」というメッセージを打ち出しながら、発話や母と眼を合わせるといった「普通になる」方向へのステップも重視されているように見えるところ。発話に頼らずアプリなどで意思を伝える力を伸ばす結末でもよかったのでは。

母の焦りの反映なのだが、親の選んだ同年代の定型発達の子に囲まれて遊ばされるのはつらいなあとか考えつつも、母の側からすれば、父が「時々ふらっとやって来る親戚のおじさん」的ポジションというのが一番こたえるだろうとも思う。

 

 

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