Hang Trinh『Muoi: The Curse Returns』(Mười: Lời nguyền trở lại、2022)

https://www.netflix.com/vn-en/title/70205129

ベトナムの幽霊映画。Netflixで英語・中国語字幕配信。1930年代、愛した男の婚約者の差し金で顔を酸で焼かれた女。旧暦7月の満月の夜に死を選んだ彼女の霊は、毎年この世に戻って身代わりを探すのだという。

主人公のレンはかつて絵の道を志したが今は画廊勤務。事故死した男友達の葬儀で、音信不通となっていた親友ハンと再会する。両親を亡くしたハンは、レンの家で姉妹同様に暮らしていたが、黙って姿を消していた。今は画家Lê Chánhの旧邸に滞在していると語り、レンを招く。

中国語題は『替屍鬼2:詛咒再臨』、2007年の韓国・ベトナム合作映画『ムイ』(므이)の翻案らしい。幽霊役の英姐(Anh Thư)は07年版でも同役を演じた由。ベトナムの幽霊伝説(Mườiという名前は「十」の意だそうで、輩行なのだろう)を仏領時代の屋敷を舞台に再構、画家の友人の最愛の女性として画布に姿を留める。

幽霊は封印したい記憶を呼び覚ます仕掛けだが、画家の絵に対峙した時、見る者の姿がそこに映し出され、同時に記憶も蘇る。画家の友人をめぐる二人の女の物語に、画家の双子の娘、そしてレンとハンと、三組の女の因縁が屋敷で重なる。

幽霊はおぼろな幻影ではなくしっかり肉体があり、幽霊どうしが首を絞め合うという衝撃の場面さえある。性被害の記憶への言及があるが、二人の男のスケッチによる示唆にとどめ、具体的な台詞や映像は入らないので、いきなり見てショックを受ける可能性は低減されている。

レンとハンを演じたChi PuとRima Thanh Vy、二人ともモデルだそうだが、丸みを帯びて華やかなレンと、鼻梁や顎の尖った線を強調し、古風な印象を強めたハンのメイクについてもメモ。


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