ジョコ・アンワル『悪魔の奴隷』(Pengabdi Setan、2017)

1981年のインドネシアが舞台。売れっ子歌手だった母は三年も病に伏せったまま、何かに脅えているようで家族との意思疎通もままならない。治療のために父は家を抵当に入れて借金するが、そのかいもなく母は世を去ってしまう。悲しみよりどこかほっとした気配の一家を、新たな恐怖が襲う。

米国ホラーだと父が頑張って一家を守るのだろうが、この映画の父親は肝心なところで出稼ぎに行って留守にしてしまい、何とも頼りない。終盤で思い出したように活躍するものの、秘密をすべて知っているのかと思えばそうでもなかったり。

緑にトーンを統一した撮影、肌を褐色に映す照明が美しい。ラストはちょっと王家衛の『欲望の翼』を連想した。ただし続編の計画がお蔵入りになることはなく、めでたく『呪餐』が公開されたのは喜ばしい。

1980年の同名のゾンビ映画(邦題は『夜霧のジョギジョギモンスター』だとか?)をリメイクしたものだそうで、最後にちらっと出て来た女ダルミナが元の映画では家政婦として屋敷に入り込み活躍しているらしい。離れた目が印象的な女優 Asmara Abigailは、どこかで見たと思ったら『恋に落ちない世界』に出ていた。

https://www.imdb.com/name/nm8822957/?ref_=tt_cl_t_12

「礼拝をしない家には悪魔が取り憑きやすい」という台詞など、取って付けたようなイスラーム色がある割に、ウスタッドはまったく活躍しない。マレーシアで「ウスタズ」というイスラーム指導者は、インドネシアでは「ウスタッド」というと覚えた。