Jastis Arimba『100% Halal』(2020)

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インドネシアイスラーム式結婚映画。母を早く亡くし、父と祖母に育てられたアニサは、父の勧めに従って高校在学中に結婚する。

しかし結婚式の当日、突然祖母が「その結婚は無効!」と叫び出す。それでも儀式は滞りなく進められ、三か月後にはめでたく妊娠も判明。そこで祖母は再び、その妊娠はハラムだから中絶するように(!)と言い出し、夫婦をパニックに陥れる。父にはアニサの監護権がないのだから、その父の監督下で執り行われた結婚は無効ということだ。だが祖母は興奮のあまり心臓発作を起こし、詳しい事情を説明しないまま急逝してしまう。

婚姻関係にない男女の間に生まれた子の監護権は、母に属するのだそうで、父が引き取って育てた場合も例外ではない由。結婚を一点の曇りもなくハラールにし、生まれて来る子が婚外子として扱われることを避けるためには、アニサの実の母を探し出し、再度結婚を執り行わなければならない。手がかりは母の写真の収められたペンダントと村の名前、そしてジャイポンガンの踊り子であったということのみ。父に直接尋ねることは憚られ、アニサは夫と二人で村を訪ねる。

母と思しき踊り子は尋ね当てたものの、かつて女児を死産で亡くしたと語る。ジャイポンガンというのはスンダ人の舞踊で、ガムランと歌に合わせるややエロティックな要素のある女踊りだそうだ。近所の少女たちを集めてレッスンをしているが、少女たちはセックスワーカーの母のもとに生まれ、せめて将来はダンサーとして独力で生計を立てられるようにということらしい。彼女自身、そうした生い立ちが結婚の障害となっていた。

こうしたイスラーム式の家族制度をめぐり、アニサの出生にまつわる秘密が明かされる。コメディタッチの部分も多く、深刻な雰囲気の映画ではない。しかし相変わらず、父となる男に覚悟が欠けていると、女が泥水をすするはめになるというこれもインドネシア映画のパターンか。

しかし、夫がアニサを見初めたのはInstagramで、どの投稿にも真っ先にハートをつけ、しかも通学路で彼女の後をつけ、好きな食べ物から親友の名前まで全てを知りつくした……ってそれはストーカーというのでは。若いうちに結婚するのが望ましいというのは父の主張で、夫も若いため、妻の家に住み込み、経済面では妻の父に頼る生活。夫婦生活は円満なのでまあよいのだろう。めでたく結婚が正しくやり直され、100%ハラールとなったところで「アッラー・アクバル」で大団円。

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