リドリー・スコット『エイリアン』(Alien、1979)

 ボディ・ホラーの文脈でよく聞くものの、見たことはなかったので初めて配信で鑑賞。

 エイリアンに襲われるシーンより、規定のプロトコルを自己判断で無視し、さらに乗組員間の連携を失うという事故発生の経緯の方がむしろ恐ろしい。そしてリプリー(シガニー・ウィーバー)の意見が顧みられないのは、指揮系統より男女の権力勾配が優先されるからであるのも明らかだ。リプリーが人間型ロボットに襲撃されるシーンでは、いちおうプライベート・スペースに当たるのだろうが、壁一面に女性のヌード写真がべたべた貼られているのも、さもありなんと思わせる。

 さらに、それらはすべて宇宙船の司令塔である「マザー」の計算に従っていたことが判明する。「マザー」の支配下から逃れようとする娘リプリーは、本船の起爆装置の作動とほぼ同時に脱出艇で射出される。エイリアンとの死闘の末、脱出艇の回収を求める信号を送り、猫のジョーンズと共にポッドに入ってスリープモードに切り替わるところで第一作は終わり。

 猫映画だったことには驚いたが、猫=女と放出された精子リプリーの組み合わせであれ、女の肉体=リプリーと雄猫バーンズの組み合わせであれ、受精の隠喩として受け取って差し支えはないのだろう。出産を絡めたボディ・ホラーになるのはどうやらシリーズの後半らしいので、第一作の時点では先取りしすぎなのかもしれないが。