ジョン・クラシンスキー『クワイエット・プレイス』(A Quiet Place、2018)

視覚は持たないが鋭敏な聴覚で動くものを襲う怪物に占領された世界。人工内耳を装用する少女とその家族は、手話をはじめ音声言語を介さないコミュニケーションでサバイバルする。『TITANE チタン』に続いて人工補綴物が描かれる映画を観た。

人工内耳のプロセッサが発する異音が鍵になるのだが、電気信号への変換がうまくゆかないのではなく、インプラントを装用している本人以外にも聞こえるようなノイズを発することがあるのだろうか? 気になるので人工内耳の仕組みについて調べてみなければ。

少女を演じたミリセント・シモンズは実際に人工内耳を装用しており、役と同様に家族で唯一のろう者であるとのこと。聴者の両親が、口話ではなく手話によって娘と話すのは珍しい設定だと思って見ていたが、実際に彼女の家族がそうであった由。

サイロの内部を興味津々で見たが、それにしても父と母と息子と娘がそれぞれに(かなり伝統的に見える)役割を果たす家族の描き方はちょっと見ていてしんどい。白人の家族が力を合わせて外の世界に立ち向かうというのは、開拓ものからホラー映画の領域に移っているのだろうか。

音を立ててはならない場面で泣く赤ん坊というと、恐らく日本の観客の多くが、防空壕で泣き声を上げた嬰児に関する残酷な話を連想するだろうが、そちらには進まないので安心である。

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