Dare Olaitan『Ile Owo』(2022)

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ナイジェリアの英語映画。永遠に若くいたいと欲した富豪が、女呪術師から「25年に一度、花嫁の命を捧げれば、おまえの息子たちはその願いを遂げられるだろう」と告げられる。民話なのだろうか、冒頭で語られるこの話を現代に移したホラー。

主人公のブソラ(愛称はブスブス bus-bus)は看護師で、婚約者の裏切りに遭って婚約を解消したものの、同僚たちが結婚してゆくのに焦りを感じている。しかも家の前にjuju(呪物)らしき悪魔を象った木彫りの人形まで置かれる始末。そんなある日、一人の外来患者から贈り物と共にデートに誘われ舞い上がる。

母は懸念を見せるが、父がOKを出したおかげで、ブソラはロマンス映画のようなデートを実現。だがその晩、神に祈る母を、悪魔の使嗾によって父が撲殺する。すべてはブソラを生贄にすべく、患者として彼女に接近した男によって仕組まれた罠であった。

ナイジェリア映画では教会のシーンがよく出て来るが、どれも厳かというより、皆で体を揺らして声を揃えて楽しそう。この映画では牧師がほとんどシャーマンのように神の声を伝え、ブソラの身に厄介な呪いがかけられたことを察知するが、それとなく暗示するにとどまる。

しかし、スリラーという割に、恐怖描写は最後の5分間程度で、それも最初から分かっている通り。むしろ、ブソラへの女友達の嫉妬があらわになる最後の場面の方が、どんな呪いよりも恐ろしいかもしれない。

話はよくわからなかったが、ナイジェリアの観客なら言わずと知れた背景があるのかもしれない。父の怪我が癒えたことを知って神に感謝する歌を歌い出す母や、抑揚をつけてたたみかける女友達の台詞回しなど、言葉と身体がしっかり結びついているようなのは、見ていて気持ちが良かった。また、女優を美しく撮ることにかけては文句のつけようがない。主人公はやや引っ込み思案で清楚な雰囲気の役で、ファッションも素敵。いくら美しい俳優でも、歯列矯正で歯並びをあまり整えすぎると笑顔がかえって不自然に見えることがあるが、前歯に隙間が見えるのが親しみを感じさせる。

上下長幼男女の序列が明確に示されるが、娘が父に対して「baba」だけではなく「sir」と言うのには驚いた(台詞はすべて英語)。しかし、その敬意に値しない父によって娘が犠牲にされるのは、もしかしてナイジェリア映画のパターンなのだろうか。

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