ビウィー・バンデル『50』(Fifty、2015)

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ナイジェリアの英語映画。ラゴスを舞台に、50歳を迎える4人の女性の人生の転換点を描く。家族関係、仕事、健康問題、性的虐待のトラウマとかなり重いテーマを含みつつ、からりとした調子でこれは意外な見つけもの。

「英雄色を好む」を地で行く勢いで若い男とばかり関係を持つ産婦人科医のエリザベス。友人の不倫を責め立てるが、本人は娘の彼氏を寝取ったせいで親子関係が危機に瀕しているのだから、他人のことは言えた義理ではない。

独身でメイドと暮らしているマリアは、50歳の誕生日に猛烈な吐き気に襲われ、不倫相手の子を身ごもったことに気付く。40代の妊娠では、閉経だと思ってつわりが始まるまで気付かずにいるのは意外とありがちなのかも……

リアリティー番組の人気司会者トラは、裕福な家庭の出身で現場でも我がまま放題、少しでも気に入らないとスタッフを怒鳴り散らすが、出演料はすべて寄付に回すという気の良い面もある。夫婦関係には隙間風が生じ、同居の弟がなだめ役に回る。

パーティープランナーのケイトは夫の事業が不振で、熱心に教会に通い、信仰の世界に救いを求めようとする。乳房に腫瘍が見つかっても、「何も悪いことはしていないのだから神はこんな罰をお与えにならないはず」と祈りに没頭する。幸い牧師がきちんと標準治療を受けるように説得する。

狭い人間関係で婚外交渉が発覚すれば、当然のごとくとんでもない修羅場が待っているが、正面きってすさまじい罵倒合戦が繰り広げられてすっきり終わる。父による娘への性暴力が、母の黙認のもとに行われ、世間の目を気にして隠蔽されるのは世界中どこにでもあることなのかもしれない。娘は結婚後もトラウマ記憶から逃れられずにいるが、そのために婚姻が破綻しても弟とは結びつきを保ち、仕事の上でも成功しているので救いはある。

富裕層の生活でファッションにも相当金がかかっているが、四人それぞれの大胆な色と柄の着こなしがまた楽しい。濃褐色や濃緑色のような暗い色の服でも、柄と小物の合わせ方ではシックでゴージャスになると発見。

監督は『半分のぼった黄色い太陽』のBiyi Bandele、54歳で昨夏亡くなった由。