ケネス・ギャング『オロトゥーレ』(Oloture、2020)

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ナイジェリアの人身売買について潜入取材するため、ラゴスセックスワーカーに扮してブローカーに接触する女性記者。当初は安全圏からの観察者によるルポのように見えたのが、レイプドラッグによる被害を受けてから、彼女自身の物語へと変わってゆく。

最初はエクスプロイテーション的に高みから女性搾取の悲惨さを強調する映画かと思ったが、やがて潜入記者の勤務先の様子が映されるにつれ、異なる様相を呈する。貧しい実家への送金やヒモによる精神的支配のために性労働に従事する女性と、危険な潜入取材に自ら乗り込む女性記者の立場はある意味で似通っている。支配構造の中で彼女らが払う犠牲は、上層の「ビッグマン」たちには取るに足らないものだ。

終盤で、渡欧の斡旋を受けるために金を払った女たちは、ラゴス郊外の人里離れた森の中に監禁され「商品」になるよう訓練される。身近で殺人を目にし、裸で並ばされて鶏の血を用いた儀式を受け、棺に横たえられて絶対服従を誓約させられ、恐怖を利用して精神的に支配されるようになる。

主人公を潜入取材に送り出した男性デスクは、彼女の身を案じ救出に手をつくすが、社にとって彼女の安否は些細な問題に過ぎない。ナイジェリアとベナン国境は出入国カウンターが屋外に設置され、管理官もマフィアの影響下にある様子。女たちはバスから降ろされることすらなく、いともたやすく国境を越えてしまう。

驚いたのは、Tobore Ovuorieというジャーナリストの実際の潜入取材(2014年)に基づく映画だという点。実際には入念にリスクを見積もり緊急時の備えをし、事前にベナン側で脱出を手配していたというが、出国前の「キャンプ」については想定外だった。からくも国境で逃亡に成功したものの、手斧で髪を切られるといった虐待から、臓器密売のための殺人を目撃することで非常な打撃を受けた。

映画とは異なりTobore Ovuorie記者は詳細な報道に成功したものの、自身の命を危険にさらす取材方法については議論を呼んだという。映画は女性の犠牲的側面に光を当てている一方、特集記事からはより主体的な側面が窺える。

Premium Times Human Trafficking Investigation | Investigation into the deadly Human Trafficking cartel in Nigeria.  

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