Rako Prijanto『Bayi Ajaib』(2023)

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インドネシアイスラームエクソシズム映画。Netflixで英語字幕配信。1982年の同名作品のリメイクである由。母が妊娠中に悪魔に犯されて生まれた息子ディディは、割礼式の失敗の日から、悪魔の依り代として血みどろの事件を起こすように。

ロケはボゴールだそうだが、時代背景は独立後、村には電気もバイクもない頃のようだ。ディディの父と悪いドゥクンの二人がそれぞれ悪魔と契約したのが発端だが、その悪魔はもともとポルトガル系のアルベルト・ドミニクという希代の悪人で、村人によって車裂きの刑に処されて埋められた。
オランダ人という設定にせず、恐らくポルトガル移民の子孫(「クリスタン」という呼称はジャワでも用いられるのだろうか)としたのは、何か背景があるのだろうか。オランダ人でも差し支えなさそうな気もするが、在来の呪術と結び付けるのには支障があるのだろうか
この悪魔(シャイタン)は、彼が村の女性を強姦して産ませた子の血を継ぐ呪術師(ドゥクン)によって召喚されるという設定。ちなみに、ディディの父はヘビースモーカーで、いつもくわえ煙草で現れる。彼が不信仰者であることが視覚的に表されているようだ。
小児の体に老人の頭を組み合わせた造形によって、悪魔に操られていることを視覚化している。多くの映画では目の色が変わったり牙が生えたりする程度で、首そのものがすげ変わるのは珍しいのでは。また、角の生えた悪魔の形象もメモ。
息子に井戸に落とされた母が、「あの子は絶対そんなことをしない、何かに憑かれている」と言い張るシーンで、憑依という概念によって人格と行動を分けて捉えられることに気付く。弟妹が生まれる前後の上の子の問題行動だけでなく、敷衍すれば、認知症なども含めて種々の病の捉え方にもつながるだろう。