スコット・スチュワート『レギオン』(Legion、2010)

いかにも善良な老女が歩行器で登場したと思ったら、四つ足で天井を這い回り、人の首を食いちぎる。悪魔憑依ものかと思ったら、黙示録映画だった。機関銃を両手で乱射するマイケルすなわちミカエルはアーミー(神の)出身の軍人。

突然のアイスクリーム販売車の登場など、意表を突かれるシーンもあり、寡黙なミカエルの造形もなかなか良かったのだが、砂漠の真ん中のドライブインで天使ミカエルとガブリエルが一騎打ちするという奇っ怪な映画。人類の希望を託された嬰児は母と(血のつながらない)父に守られる。

いつもながら、アメリカ映画の「父」の役割は大変だと(何しろ人間の身でガブリエルと格闘を演じなければ父になれないのだ)他人事のように感心するが、天使が肉弾戦を演じる映画というのもよく思い付くものだ。

ところで、予定日よりだいぶ早い出産は、陣痛が始まったと思ったらあっという間に産まれる超安産で、さすがミカエルが助産師を務めるだけあって話が早い。赤ちゃんも産まれてすぐにぱっちり目を開き、目で人の動きを追っている。人類存続の希望を一身に負うだけのことはある。