中田秀夫『リング2』(1999)

 『リング』の続編だが、原作小説のある『らせん』とは別の、高橋洋脚本によるオリジナル展開とのこと。主人公は数学科助手の高野舞(中谷美紀)で、教員だった恋人の死の謎を追って呪いのビデオと山村貞子にたどり着く。ざらついた映像で『リング』直系の不気味さに満ちているが、後半で今度は心霊実験の疑似科学路線へと突き進む。

 

 

 『らせん』の冒頭で死んでいた浅川・陽一母子は、『リング2』では失踪しており、後に阿佐ヶ谷付近に隠れ住んでいたことが判明する。幼い陽一には父譲りの超能力が備わっており、かつての貞子と同様、怒りの暴走で対象を死に至らしめるほどのエネルギーを放出することが分かる。

 大学病院勤務の精神科医が彼に着目し、貞子の怨念を陽一を媒介に大量の真水によって消すと言い出し、伊豆の貞子の実家で怪しげな実験を始める。時代が変わっても超能力者は結局「見世物」か「化物」、よくて「実験対象」なのだった。

 貞子さんの怨念を消すなら、実験より前に墓を建てて、母と一緒に供養してあげてはどうかと思うが、女の怨霊は男(精神科医)の力で消し去ることが求められるという点で、魔女狩り映画の変奏なのかもしれない。

 山村貞子は井戸の中で死んでいたが、突き落とされてすぐに死んだのではなく、三十年間生きながらえていたという衝撃の設定。いくらフィクションでも可哀想すぎる。そして白骨化した遺体は従兄が警察から引き取るが、荼毘に付さずに棺ごと海に流す。普通に死体遺棄だろう。

 『水からの伝言』がこの映画と同年の刊行らしいが、水が人間の感情によって性質を変える(映画では浸透圧が変わる)という設定には、何か当時受け入れられるような背景があったのだろうか。

 結局、貞子の怨念の井戸に落とされた舞が、生前恋人だった陽一の父の助けを得て、無事に陽一を背負って生還する。オルフェウスイザナギの冥界訪問のパターンを踏襲しつつ、おぞましい姿に変貌した女の手から逃れるとともに、男たちは死の報いを受ける結末。

 映画館向けに背景音と台詞のバランスが調整されているのか、パソコン内蔵のオーディオでは台詞にどうも聞き取れない箇所がある。家庭用でももう少しましなスピーカーやヘッドホンを通さないと拾えない音があるのかもしれない。

 

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