飯田譲治『らせん』(1998)

 鈴木光司原作の映画『リング』(1998)の続編。

 小説『らせん』は未読で、短編「空に浮かぶ棺」(『平成怪奇小説傑作集〈2〉』創元推理文庫)のみを読んでおり、高野舞が処女懐胎から出産する話だと思っていた。映画では、死への不安と恐怖に憑かれた男を慰めようとした結果、山村貞子の生まれ変わりを受胎してしまうという設定。出産のプロセスも描かれず、ただ舞が失踪したアパートのバスルームに血痕の描写があったのみ。水を張ったバスタブの底の血が、ついさっき浴槽に浸かった状態で出血したという状況をリアルに描写しているのに驚いた。

 『らせん』の主人公は、『リング』に登場した高山と大学の同期だった安藤(佐藤浩市)。患者の治療にあたるのではなく、日々死者の体にメスを入れる解剖医だ。彼の元に持ち込まれたのが高山の遺体で、解剖中に高山が上半身を起こして皮肉を浴びせる幻覚を見る。安藤は高山に対して競争心を持っており、親しい友人ではあったものの、どことなく彼に嘲られているような妄想を抱いていたらしい。死因を確かめる過程で、第一発見者で高山の恋人だった舞(中谷美紀)、さらに報道部の吉野(松重豊)と接触することになった安藤は、呪いのビデオテープを見てしまう。

 不鮮明なビデオ映像を多用した演出の『リング』とはかなり雰囲気が異なり、「ウイルス」伝播のしくみに関する説明の部分が多く、特に目立ったショックシーンはない。舞の姿を借りて復活した貞子の登場シーンも、恐怖より官能性が強調されている。併映だと、当時劇場で見た客も、『リング』の衝撃から気を取り直して帰宅するのにちょうどよかったかもしれない。

 

 

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