中田秀夫『リング』(1998)

 見ると七日間で死ぬ呪いのビデオについて取材する浅川(松嶋菜々子)は、自分の姪(竹内結子)の死が関連していたことを知り、調査を進める。

 なぜ突然別れた夫・高山(真田広之)に連絡するのかと思ったら、彼は「視える」人物であり、二人の間の息子陽一もその能力を受け継いでいることが判明。

 呪いのビデオの断片的情報から、山村志津子・貞子母娘にたどり着くまでずいぶん手際がよいが、テレビ局のディレクターと研究者の(元)夫婦で取材と調べ物は専門、さらに読心術から物体の残留思念を読み取る力まで加わり、観客も一緒に再現映像を幻影として体験できる仕掛け。

 昔観た記憶はあるが、井戸で遺骨が発見されるシーンを除けば、テレビから貞子さんが這い出してくる瞬間のインパクトで、ほかはすべて記憶の彼方だった。貞子さんがあまりに気の毒で、それは化けて出るどころか、無差別に呪いをばらまきたくもなるだろうと同情する。(しかしこれから処女懐胎する高野舞はとんだとばっちりでこちらも気の毒すぎる)

 音の入れ方が思ったより昔の怪談映画の雰囲気に近く、伝統芸のような手堅さを感じる。サウンドは当時の邦画のスタンダードだったのか、戦後そう時間の経っていない幼児期の貞子の記憶に、携帯電話普及期の同時代を近付けるレトロな演出だったのだろうか。

 1998年というのは昔というほど古くもないようだが、「写真の現像」「VHSテープのダビング」「ダイヤル式電話」のように、ごくありふれたものが今ではもう消えてしまったこと、街中のシーンでも気付かないうちにこういう店構えがどんどん少なくなっていることに改めて驚く。

★同時公開の続編『らせん』

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