ウィリアム・ブレント・ベル『邪悪は宿る』(Separation、2021)

 漫画家の夫(ルパート・フレンド)と弁護士事務所で働く妻。夫はかつてヒット作を生んだものの、今や事実上の無職である。妻の父はやり手の弁護士で、妻はそこで働いて一家を養っている。夫の方はいつまでたっても大人になれず、娘の世話どころか、怪我をしたのにも気づかない体たらく。妻はついに堪忍袋の緒を切らして離婚を申し出る。問題は幼い娘ジェニーの親権で、妻は単独親権を主張する。一歩たりとも譲らない妻を相手に、調停はこじれる一方だ。しかしまさにそのさなかに、妻は車に轢かれて死んでしまう。
 妻の父はあくまで親権を争う構えで、夫は何としても娘を手放すまいと、気は進まないものの大手プロダクションにアシスタントとして就職する。だが、妻の葬儀の日以来、娘には「何か」の存在が見えるようになり……。
 これが『エスター ファースト・キル』の監督作品? と驚かされた一本。冒頭から明らかに気がある風のベビーシッター(マデリーン・ブルーワー)に対し、夫はバカなのか鈍いのか、はたまたアメリカ的イノセンスの表れなのか、さっぱり理解していない様子。死後もなお娘を手放すまいとする妻の執念、と見せかけてサイコサスペンス、と見せかけてやっぱり幽霊もの、という構成。無理に尺を伸ばそうと挿入したようなフラッシュバック、幻覚剤を使用して亡き妻と対話を試みる一夜など、全体に弛緩して長く感じる。

 

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