ダリン・スコット『ディープ・ブルー2』(Deep Blue Sea 2、2018)

1999年の第一作からずいぶん間を空けての続編。サメ映画履修4作目。シンギュラリティを前に人類がコンピュータにうち勝つため、知能をブーストする薬を開発しようと試みるマッドサイエンティスト

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 極秘実験を繰り返し、高い知性と人類に対する強烈な悪意を持ったオオメジロザメを5頭も生み出してしまった科学者。しかも子ザメがうようよ生まれてくる。研究倫理もへったくれもあったものではないが、前作とは異なり実験の詳細は説明されず、今回は実験動物がサメである必然性もよくわからなかった。

 舞台は南アフリカ沖、研究所から脱走した凶悪なサメの群れにフカヒレ漁船が襲われるシーンから始まる。ヒレだけを切り取って胴体を海に捨てる場面と、四肢をもぎ取られた漁師が海底に沈んでゆく光景が呼応する仕掛け。この冒頭のシーンだけが放り出されて、本筋に続かないのはもったいない。

 2018年といえば、台湾の地下鉄で「フカヒレを食べるのをやめよう」というキャンペーンポスターが車両買い切りで掲示されていたのを見かけた時期だ。フカヒレ漁師ではなく、中華宴席に連なった客がサメの餌になるべきではないかとも思ったが、それでは中国市場は狙えないか。

 遺伝子改変種の流出は阻止すべきであるにせよ、人間が作り出してしまった以上、いくら人間の側から見て狡猾で邪悪なサメであろうとも、その福祉はもう少し考慮されてよいのでは、という気はする。爆発映画とはいえ、何もサメを爆殺しなくても……人食いザメが人類に理解可能な言語を操る設定だったら、殺処分にもためらいが生まれるだろう。AIとヒトの間は映画のテーマになっても、サメと人間の間の懸隔が問題にされず、サメの個体としての幸福を誰も考えないのは、結局知能ではなく言語の問題?

 

ディープ・ブルー2 [Blu-ray]

 

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