レニー・ハーリン『ディープ・ブルー』 (Deep Blue Sea、1999)

 『ジョーズ』に続きサメ映画。船で男たちがサメと戦うのかと思ったら、マッドサイエンティストによって養殖されたサメたちに、研究所が襲われる脱出パニックだった。

 クローン羊のドリーがニュースになったのが97年、生命倫理にかかわる現実的な課題が新聞を賑わせていた頃か。他種の生命をコントロールすることで人間の病の特効薬を開発しようとする研究者たちに対し、陽気で信仰心の篤いコック(LL・クール・J)が登場する。ユーモラスなキャラクターを通じて信仰のあり方を描くことで、人間の領域と神の領域という議論に持ち込むのを避けているようだ。

 サメの脱走の報を受けて、視察にやって来た製薬会社社長(サミュエル・L・ジャクソン)は、実は山岳事故で雪崩の中から生還した肉体派。コックが「黒人は至る所で死んでるんだから、登山なんて白人に任せときゃいいのに」と皮肉を言うが、Black Lives Matter 以前なら聞き流してしまった台詞かもしれない。

 ネコがネズミをいたぶるようなこと(cat-and-mouse thing)をする者は、海の世界では溺れるだけ、との台詞が序盤にあるが、その後高い知能を持つ凶悪なサメたちがまさにそうやって人間どもをなぶり殺しにする。人体損壊の表現そのものより、見せつけるような殺し方の悪意たるや。

ディープ・ブルー (字幕版)

ディープ・ブルー (字幕版)

  • サフロン・バローズ
Amazon

 

 

zacco-q.hatenablog.com