ディエデリック・ファン・ローイェン『エンドレス・エクソシズム』(The Possession of Hannah Grace、2018)

主人公メーガンは元警察官で、同僚の死に対する衝撃と自責から、フラッシュバックに苦しみ、アルコールと抗不安薬の依存に陥っている。彼女の目を通して映し出されるものは、現実なのかトラウマ反応なのか判別し難い。

「体験を語っても信じてもらえない」というホラー映画のパターンは、依存行動のため、そしてそれを隠蔽するために重ねる嘘が、依存症患者と周囲との信頼関係を損なってゆく先に待ち受けている。隠蔽のために防衛的になる自分と向き合うことが、信じるために必要な跳躍の踏切板となる。

〈病〉の隠喩としてのホラー映画は色々ありそうだが、依存症をテーマにしたものは初めて。一夜の経験はステップにこそなれ、すべてを解決するものではない。殺しても殺しても蘇る悪魔を監視し続けるのと同じく、時間をかける必要があることを示唆して終わる。

ちなみに悪魔祓いのシーンは冒頭のみで、ほとんどは『ジェーン・ドウの解剖』のように霊安室で起こるホラー。