ジャファール・パナヒ『オフサイド・ガールズ』

オフサイド・ガールズ [DVD]

オフサイド・ガールズ [DVD]

 

 ジャファール・パナヒ『オフサイド・ガールズ』(公式サイト)、だいぶ前にDVDで観たので記憶に残っている部分だけメモ。
 女子観覧禁止のサッカースタジアムに、何とかして潜り込もうとありとあらゆる策を弄する女たち。女性専用席が区切ってあるのかと思ったが、イランでは入場自体が禁止されているのだそうだ。顔にペイントをして、国旗でも頭に巻いておけば何とか誤魔化せる、という程度の男装から、言われなければ女と分からないほど完璧に化ける者、果ては軍服を調達して警備の軍人に化けて潜り込む者まで。涙ぐましい努力も空しく、正体がばれた女たちは一人ずつ客席裏の人目につかない場所に連行され、厳重な監視を受けることになる。
 漏れ聞こえてくる外の喧噪をよそに、不条理な力で狭い場所に閉じ込められるという構図は、監督が5年後に撮影することになる『これは映画ではない』を予見したかのようで驚かされる。護送車から下りて勝利に沸き立つ街頭に歩み出す女たち、そこに降り注ぐ花火というラストも、マンションの入り口から火祭り(燃える火曜日)のたき火を垣間見る『これは映画ではない』にそっくりだ。
 日本戦で7人の死者が出た、というのが一人の少女がスタジアムに向かう重要な動機になっているのだが、そんな事故があったとは知らなかった。公式サイトには監督によって次のように紹介されている。

そして2006年のW杯予選で、イランは日本と対戦しました。この試合はおよそ11万人もの人々が詰め掛けるという超満員でした。試合終了後、スタジアムの外では軍隊のヘリコプターが出動し、観衆が近づけないように兵士たちが周りを取り囲んでいたのですが、兵士と観客の間で揉み合いが始まり、何人かが大勢の人々の下敷きになりました。7人が死亡し多くの人が怪我をしましたが、報道された写真には6人しか写っていませんでした。そこで7人目の犠牲者は女性だったのではないか?という噂が飛び交ったのです。これについては明白な証拠がないのですが、その女性は男装をしてスタジアムに潜り込んだため、発表されなかった可能性が高いと思っています。

原題:آفساید
英題:Offside
製作年:2006
制作国:イラン
プロデューサー:ジャファール・パナヒ
監督:ジャファール・パナヒ(Jafar Panahi)
脚本:ジャファール・パナヒ、ジャドメヘル・ラスティン(Shadmehr Rastin)
出演:シマ・モバラク・シャヒ(Sima Mobarak-Shahi)、サファル・サマンダール、シャイヤステ・イラニ(Shayesteh Irani)、M・キャラバディ(Mohammad Kheir-abadi)、イダ・サデギ(Ayda Sadeqi)、ゴルナズ・ファルマニ(Golnaz Farmani)、ナザニン・セディクジャザデ(Nazanin Sediq-zadeh)
音楽:コロシュ・ボゾルグプール(Korosh Bozorgpour)、Yuval Barazani
編集:ジャファール・パナヒ
撮影:ハマムード・カラリ(Mahmoud Kalari)、Rami Agami