上田慎一郎『カメラを止めるな!』(2017)

 浄水場跡地の廃墟でゾンビ映画を撮影するチームを、本物のゾンビが襲う。しかし「本物」に憑かれた監督は、俳優やスタッフが惨殺される中、カメラを回し続け……。カメラのレンズについた血しぶきを拭き取る手や、「ちょっとカメラ本当に止めて!」とカメラマンに向かって俳優が言う台詞が入っており、メタな映画になっている。
 このワンカット短編が前半の劇中劇。エンドクレジットの後、実はゾンビ映画専門に開局された「ゾンビチャンネル」のためのワンカット・生放送というテレビ映画だったことが判明する。そしてトラブル続きの撮影裏話を明かす形で後半が始まる。
 黒柳徹子が書いていたテレビ放送初期の謎番組(今となっては録画も存在しないだろう)のドタバタや、マキノ雅弘「二十八時間で一本映画を撮る」を想起させるコメディ。前半の劇中劇の「何これ?」と思った箇所が、後半で「なるほど……」と回収される構成だ。そもそもゾンビ映画をなぜワンカットで撮ろうと思ったのかについては、初めに企画ありきで、「早い、安い、質はそこそこ」で売っている主人公が監督を引き受けたという経緯が明らかになる。
 映画製作についての映画(あるいは映画が撮れない映画)は無数にあるが、エンディングで撮影のメイキング映像が映り、実際のスタッフが働いているのを見ると、感動的とさえいえる。