エイドリアン・テー『PASKAL: マレーシア海軍特殊部隊』(PASKAL: The Movie、2018)

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Netflixのミリタリー・アクション。主人公のアルマンは過酷な訓練を経て特殊部隊に選抜され、アンゴラでのPKOに参加し、アデン湾でハイジャックされた船舶と、サバ州東海岸で占拠されたタンカーからの人質救出作戦の陣頭指揮をとる。

ひたすら男の映画で、女は守られる存在であり、男の友情を完全なものにするために配置されている。『Wira』『アシスタント』に続いてHairul Azreen とHenley Hii が親友役。アルマンの父は早く殉職しており、訓練の修了式に母は不参加。親友のジョシュアと婚約者のリリーが、「今日は家族だ」と一緒に写真を撮る。

ジョシュアはアンゴラで民間人の妊婦をかばい、手榴弾に吹き飛ばされてあっけなく殉職。しかしアルマンとの友情が媒介となり、残されたリリーと息子、アルマンとその母と間に擬似的な家族関係が生じる。そして後にリリーが人質に取られ、アルマンが救出にあたることになる。

ただ、父と夫を失ったマレー人の母子の経験を、華人でクリスチャンの母子が反復することで、同じ悲しみを抱えた二つの家族が強く結びつくという設定には注目される。民族と宗教が異なっても、家族同然に付き合えるというメッセージではあるのだろう。

「国家と家族は同義」という台詞で映画は締めくくられる。相当の予算を投じた大作で、当然軍の協力も得ているのだろうし、形式的にでもプロパガンダの色彩を帯びるのは当然だろう。色々作戦用のガジェットが登場するのや、頭に一発銃弾をぶち込めば済むところに、無理やり肉弾戦をねじ込むのは面白かった。

カットを分けてもよさそうなところで、パンで撮る動的な撮影が入ったり、作戦シーン以外も中だるみしない。アクションシーンも大半がコンバットスーツ着用で、訓練中の宿舎のシーンを除けば、男優が無駄に裸にならないのもポイントが高い。アクション映画では男優が腹筋を見せなければならないというルールがあるのだろうから、コンマ数秒なら我慢してやろう。

ところで、『Wira』でHairul Azreen が元コマンダーという設定だったのは、この映画に由来したようだ。ラストでテロリスト集団を特殊部隊が制圧したというニュースが流れ、突然ナムロンが出て来るのも、この映画に言及するファンサービスだったらしい。

実際の事件を背景にしているそうだが、それにしてもアンゴラの国連PKOは年代が合わないのでは?と思ったが、劇終の説明画面によるとマレーシアの部隊派遣は98年とのこと(らしい、マレー語だったので読めない)。前後関係はかなり入れ替えてあるようだ。だが、アンゴラの歴史が映画の都合で10年以上ずらされている?

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