シャムスル・ユーソフ『マット・キラウ 自由のための反逆』(Mat Kilau: Kebangkitan Pahlawan、2022)

https://www.netflix.com/jp/title/81577427

英国が支配の手を広げつつあるパハンでのマット・キラウの蜂起(1891-95)を描いたマレーシア映画。簡単に言ってしまうと、マレー・ナショナリズム+シラット・アクションだった。

〈ムナフィク〉シリーズの監督が手がけており、悪役が黒いアイラインを引いているのも同じ。イスラームの信仰とMelayuの土地、祖国(bangsa)を守るため、イギリス人の侵略に抵抗するという構図で描かれる。

イギリスの軍人が率いるのがシーク教徒の部隊なのだが、兵士は一人残らずモブキャラ扱いで、あらかた登場と同時になぎ倒される。植民地インドから来た彼らにも事情はあるだろうが、そのあたりは無視。なお、狡猾な中国人が英国の手先として登場する。

ラスボスはチャールズ・ブルックの推薦によりはるばるボルネオから雇われてきた殺し屋トーガ。刀を持った使い手二人を素手で相手にするのが見せ場で、〈ザ・レイド〉シリーズのベテラン Yayan Ruhian によるさすがのアクション。イギリスの犬となったマレー人は黒いアイメイクで見分けがつくようになっているのだが、このトーガの役はそうではない。ボルネオ出身という設定が Melayu の外部であるからなのか、インドネシア人のヤヤン・ルヒアンを起用しているのは単に人気やスター性以外の理由があるのだろうか。

ところで、マット・キラウの人生といえば、この反乱の後に死んだと思われていた彼が、70年以上経って1969年に突如名乗り出、まさに本人と確認されたという以上に伝奇的な出来事はないだろう。映画では言及されなかったが。

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