マイケル・チャベス『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』(The Curse of La Llorona、2019)

 死霊館シリーズのスピンオフのような位置づけで、ウォーレン夫妻は登場しないが、人形アナベルを封印した神父がちょっと登場する。『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(2021)のマイケル・チャベスの長編初監督である由。

 〈ラ・ヨローナ〉とはメキシコの伝承で、ドレス姿の女の幽霊。何不自由ない幸福の中に二人の息子を産み育てていた女性が、夫の裏切りを知り、夫の最愛のものを奪うために息子たちを溺死させ自分も川に身を投げるという話。息子たちの身代わりを求めて子供の命を奪いに来るのだという。たぶん先住民女性とスペイン人入植者の物語なのだろうが、映画では特に先住民としては描かれていなかったと思う。

 時は1973年のロサンゼルスに移る。警察官の夫を亡くし、幼い兄妹を一人で育てているケースワーカーのアンナ。担当しているメキシコ系の一家について、息子たちが登校していないと報告があり、警察官と家を訪問することになる。出迎えたシングルマザーのパトリシアは明らかに様子がおかしく、家の中にも大量に蝋燭が灯され、怪しげな雰囲気だ。兄弟は狭い物置に閉じ込められているのが発見され、救出される。パトリシアは「今夜一晩だけ!」と懇願するが聞き入れられない。

 しかし、施設に保護された兄弟はその夜、川で溺死しているのが発見される。現場に駆け付けたパトリシアは、アンナが息子たちを殺したのだと罵り、「ラ・ヨローナ」のしわざだと告げる。その日から、アンナと兄妹は長いドレスの女の幽霊に悩まされることになる。

 神父に相談しても、バチカンから悪魔祓いの許可を得るには数週間かかるといわれ、紹介された呪術師ラファエルに頼ることになる。彼は元々神父だったが、教会と科学に背を向けて超自然的現象に対処している。

 手持ちカメラの緩急がすばらしく、サウンドも巧みにめりはりを効かせている。フェイントの直後、安堵の息をついたところでのジャンプスケアのような技巧もあるが、幽霊の気配の緊張感がうまい。

 アンナはケースワーカーとして相談役だったはずが、自分が虐待を疑われる側に回ることになってしまう。手を差し伸べているつもりだったメキシコ系女性から手痛いしっぺ返しを受ける構成は、幽霊物語の枠の中でケアをめぐる困難を示唆しているようだ。

 

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