金華青『チベット・ガール 翼を求めて』(貢秋卓瑪、The Tibetan Girl、2016)

 30分の短編。アジアンドキュメンタリーズ配信。

 中国・四川省アバ出身の女性歌手。家族の心配をよそに単身北京に赴くが、信仰と生活が一体となった草原の暮らしとはまったく異なる上、漢族の飲食その他の習慣にも馴染めない。かといって、帰郷しても虚しさから逃れることはできないと思いつめる。

asiandocs.co.jp

 折よく海外公演の話が舞い込むが、民族籍がチベットだと出国手続きに多くの書類取得が求められる。パスポートの交付も容易ではなく、四川では交付率が低いと聞いて北京での申請を模索するがうまくゆかない。

 妹は高校卒業後、海外留学したいと望んでいるが、中国語による教材が大半で、チベット語教育を受けてきた彼女には英語のハードルが高い。また、チベット語高校の卒業生の場合、入試で出願可能なのは四川・青海・甘粛の三省の大学に限られる(民族大学だろう)。漢語学校出身なら全国に出願できるという。

 結局姉は戸籍のあるアバに帰って申請し、無事パスポートが交付されたところでフィルムは終わる。曖昧にされているが、正面からなら却下されていたのかもしれない。チベット料理店で駐唱歌手として出演する彼女が歌う一曲が「白い鶴よ、翼を貸しておくれ」。