インドネシア・マカッサルの埋め立て工事が、伝統的漁業で暮らしていた人々の生活に与えた影響を追う26分間のショートドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで配信。
埋め立て以前の生活の記録映像は挿入されないが、海にアクセスできずボートで入り江に出かけてゴミを集める撮影時点(2016年)の生活では、漁業は小遣い稼ぎ程度にしかならないようだ。過密化が問題となっている首都ジャカルタの機能を分散するため、2016年には再度の埋め立て計画が承認された由。
朝からゴミであふれた岸に出てプラスチックを集める夫婦は、幼い娘が金を盗んだと疑いをかけられ慌てて家に戻る。幸い警察沙汰は免れたものの、「悪い友達と遊んじゃだめ」と厳しく言い渡すことに。子供たちは見るからに不衛生な水路で水遊びしており、健康を害さないか心配になる。
家屋はしばしば浸水するが、ベッドも壊して住居の修理に使ってしまっており、床に寝ている状態だったため、家財道具が水浸しになってしまう。家の中は雑多に物を積み上げるしかなく、外もゴミでいっぱい、大量の蠅が飛んでいて、住環境は劣悪と言わざるを得ない。
息子は近所の子供たちを集めてクルアーンを教えており、新しいモスクの建設も進み、彼が指導者に迎えられる予定だという。しかし、サウジアラビアに行って電気技師になりたいという彼は、子供たちへの責任と生活向上の希望の間で板挟みに。こうした生活の中で、なお宗教教育を支える人の存在を知る。
マカッサルについて検索すると、美しい夕陽のロサリビーチの観光情報が目にとまるが、まさにその辺りが2023年の今なお洪水に悩まされているという。映画の最後には、洪水の夜に近所の三歳の男児が死んだとの知らせがやりとりされる。
不法投棄ゴミに関しては、インドネシアで処理できる能力を超えているというより、海洋プラスチックゴミと同様に多国間で対策が必要な課題なのかもしれない。