ワフユ・ウタミ『伴侶さがし』(Golek Garwo、2020)

インドネシアの短編ドキュメンタリー。アジアンドキュメンタリーズで配信。

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 老後の伴侶がほしいとお見合いパーティーに参加する60代の男性。30分間で出会いから結婚式、ハネムーンにその後の生活までを一気に記録する。

 身の回りの世話をしてくれる人がほしい、誰かに気に掛けてほしいと「~してほしい」を連発するこの男性に、そんな都合のよい結婚が可能なのか? と思うが、とんとん拍子にお相手が見つかり、女性も乗り気でたちまち成婚。

 話を聞きつけた近所の男どもが、「それでいつ離婚するんだ?」「結婚式の後か?」「精力がもつのはあと5年が限界だろうよ、げへへ」と遠慮なくからかう。言われた方も(内心面白くないかもしれないが)にやにやしているので、気心の知れた仲間うちではよくある悪ふざけか。

 合同結婚式で一組ずつ誓いをするのだが、まさかここで婚資の額を大公開されてしまうのか? と心配したのは杞憂でよかった。証人の前で、インドネシア国旗とパンチャシラのもとに結婚の誓いを立てるという形式。

 同居で毎日ご飯の支度をしてほしい、という条件でも出しているのかと思いきや、相手の女性は仕事を持っていて、互いの職場が遠いために別居婚となる。ふざける夫を、妻が鼻であしらう様子は、なんだかもう30年くらい連れ添っているように見える。

 月に一度だけ妻がバイクで会いに来るほかは、毎晩寝る前にベッドで電話するのが楽しみという。「恋しくて病気だから来てよ」と甘えてみるがいなされる。結局「会いに来てくれないならこちらから行くか」と鼻歌交じりに田舎道をはるばる自転車を走らせることに。

 50~60代でもまだまだ遠距離恋愛のドキドキ感が味わえる、みずみずしい「梅開二度」の記録。ちなみに、インドネシアではどうも結婚指輪は右手薬指にはめるものらしい。

 日本でももしかすると、結婚歴のない人々が老境に達して、「同居は望まないが茶飲み友達がほしい」「週末だけ一緒に泊まりたい」というタイプのパートナーシップを築く流れも自然に生まれるかもしれない。

 フィルムは京大東南研のVisual Documentary Projectで2020年に紹介されていた。監督の短いインタビューとメッセージも。

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