王盈舜『台湾 信仰との対話 第2集:神とアッラーと精霊の声(與信仰對話 第二集:聆聽天主、阿拉與靈)』(2018)

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52分間で台湾のキリスト教イスラーム、原住民(アミ族)の信仰が次々にフォーカスされる。

最初は台湾唯一のカトリックの村といわれる屏東県万金村。万金聖母聖殿でのミサと、聖像制作者、聖母巡行の神輿が映される。思い出したのは小説『苦雨之地』のウンピョウの話で、主人公が大武山に入る際に滞在した聖母像を祀った村というのが、固有名詞は示されないものの万金村のことだろう。

次は南投県ブヌン族の東光教会。こちらは長老派なので聖像は置かず、教会にあるのは十字架のみ。キリストの受難を再現し十字架を負って歩く儀式が映される。戦後、特に50年代から60年代にかけて原住民の多くがクリスチャンになったという。

台湾のイスラームについて取り上げられるのは桃園の龍岡モスク。元々は雲南の国境地帯出身の軍人とその子孫のムスリムが建てたそうだが、今はインドネシア移民の方が多くなっているようで、インタビューに答えるのもインドネシア出身の若い女性。勤務中の断食や礼拝の許可が下りないのが辛いと語る。台北駅での同郷人のイベントに続き、インドネシアから指導者を招聘して催された式典の様子が紹介される。ステージから指導者が祈りを呼びかけてライブさながらに盛り上げる。信徒は座ったままだが懺悔しながら自然に体を揺らし、感極まって涙する者も。

原住民の信仰として取り上げられるのは、花蓮の里漏部落のシガワサイと呼ばれるアミ族の祭師。大学で教職に就いているパナイという女性は、隣村のクリスチャンの家庭で育ったが、20代から伝統信仰に触れて30年になるという。めまいの病がひどく、二回交通事故に遭い、「三度目はないよ(=次は命を落とす)」と言われ、最年少の祭師となったという。アミ族の祭師はみな女性で、あれこれ禁忌も多く(葱と大蒜は口にしないなど)、今後の継承には困難があるようだ。

自然の霊とつながる「マラルム」と呼ばれる境地が重視され、年長の祭師は時に一人で野に出て自然の精霊と交流するのだそうだ。様々な歌や踊りなどの儀式の様子に加え、最後に檳榔と米糕をシャーマンと精霊が投げ合う様子が映し出される。その儀式を通じて祖霊と再会できるそうで、この世を去った家族に会えるのだとか。