ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(The Blair Witch Project、1999)

 ファウンド・フッテージホラーの有名作品なので、今さらながら見てみた。後からこの手法はもっと洗練されてきたこともあり、今なら話題になることもなさそうで、先行作の悲哀を感じる。ロケ地はメリーランド州の国立公園である由。ブレアの魔女の伝説を取材して映画を撮ろうとした三人の学生が消息を絶ち、一年後に発見されたフィルムという設定。

 スーパーナチュラルというより、道迷い遭難でパニックになった三人の前に、ちょこちょこと積まれた石や呪術人形らしきもの、血まみれの布に包まれた髪が現れるという具合。

 監督のヘザー(ヘザー・ドナヒュー)、カメラマンのジョシュ(ジョシュア・レナード)、録音担当のマイク(マイケル・C・ウィリアムズ )の三人が森に入る。近くの町では複数の伝説を採集するものの、魔女について明確な輪郭が描かれるわけではない。ただ、ブレアの森には地元の人は足を踏み入れない。Redneck の呼称が迷信深さと関連づけて出て来たことをメモ。

 夜ごと怪しい物音に悩まされ、森から出られなくなって二人の男はヒステリー状態に陥る。ジョシュは16ミリカメラで撮影しているが、ヘザーの視点でハンディカムで撮られたものが多用され、映っているのはほとんどがジョシュとマイクの姿だ。カメラを回し続けるヘザーに対して男二人は怒りを溜め、ジョシュは「お前が撮影が好きなのは現実ではなくフレームの中の映像を見たいからだ」「お前のせいでこうなったのに認めようとしない」と詰る。その後、朝起きるとジョシュの姿が消えている。

 ヘザーはテントの中で、カメラに向かってすべて自分が悪かったと三人の母に謝罪のメッセージを自撮りする。「魔女」を冠した伝説というのもポイントだが、女が被写体ではなく撮影する(世界を枠にはめる)側に回ると非難され、謝罪に追い込まれ、最後には命を落とすという話だったのかと驚いた。

 

 

 ヘザーのナビゲーションに対し、マイクは何度も不平を言うが、地図を渡されると「白状するが俺にとってはギリシャ語だ」と言う。「ほらやっぱり」と鬼の首でも取ったようなヘザー。しかし、あっても役に立たないと、こっそり地図を捨てられるというしっぺ返しに遭う。道を探している時に地図を捨てるという行為そのものが、超自然の力に操られてか錯乱状態にあることを示しているのかもしれないが、自分に理解できないものを無価値と判断して廃棄するというより、恥をかかされたことへの怒りであるようだ。地図を読むのが不得手な人や、最初から読む気がなく他人任せで迷うと文句を言う人はこの世に掃いて捨てるほどいるが、もしかするとマイクの場合は、学習障害か空間認識の問題を子供の頃からカムフラージュしていたのかもしれない。

 最後に学生二人は、ジョシュと思われる声に反応して廃墟に入り込んでしまう。山や森で名前を呼ばれても返事をしてはいけないというのは、世界共通の常識だろうが、禁忌を犯さないとホラーにならないので仕方ない。