Nizam Razak『メカアマト』(Mechamato、2021-2022)シーズン1

 マレーシアの3Dアニメ。少年アマトが、相棒のメカボットとともに、身の回りのモノを「メカナイズ」して悪のロボット(robot jahat)と戦うアクションもの。各話20分程度でエンディングには毎回メカアマト工作コーナーもある。

hatimalaysia.com

 上の記事によると舞台はマラッカをイメージしているとのこと。マレーシア名物カリーパフが出て来るようなご当地要素も楽しい。登場人物は多民族にわたることがビジュアルと名前で分かるようになっているが、モスクや教会は街並みの中に描かれない。ショップハウスの窓は見えるものの、騎楼は目立たないように描かれ、その外側が歩道になっている。段差がない分だけ車椅子での通行はスムーズだ。

 Netflixの配信でシーズン1を鑑賞。対象年齢は7歳からなので台詞は比較的平易だ。日本語吹き替えもあるが、マレー語で聴き、最初は英語字幕(日本語字幕はないYouTube配信版にはある)、二度目はマレー語字幕で辞書を引き引き見た。各話の紹介とともに、覚えたマレー語のフレーズ(字幕を書き写し、口語体が字幕で改められている部分は、聞き取れた範囲で直した)をメモしておく。

 

1.コントロール不能(Kemunculan Koncho-Koncho)

悪のロボット:Koncho(三角コーン)

 夜中にマンホールから現れた三角コーンたちが額を集めてコンチョコンチョと悪巧み。そうだ! 十字路にスイミングプールを作って交通渋滞を起こしてやる!三角コーンの中にひとりだけマレー語を話せるやつがいて、対決中に三角コーン語を通訳してくれるという親切設計。

 名札が見つからず焦るアマト(マレーシアの小学生も校内では名札着用なのか)。ただでも遅刻しそうなのに、大渋滞に引っかかり、原因を作った悪のロボットと戦うはめに。

Mana aku letak semalam ? (ゆうべどこに置いたっけ?)
Cepat ! Kita dah lambat ! (急げ!もう遅刻だぞ!)
Robot mana perlu gosok gigi! (ロボットになんで歯磨きする必要が?)

※"mana"の疑問・反語の用法は中国語の「哪」と同様に理解すればよいらしい。

Pergi dulu abah, umi ! Assalamualaikum !(もう行くよ、父さん、母さん。行ってきます) Waalaikumussalam.(行ってらっしゃい)

ムスリムのよい子は「行ってきます」も「ただいま」も "Assalamualaikum" でごあいさつ。

Sedapnya karipap ini! (うまいなあこのカリーパフ!)
Kalau cikgu tanya, kata aku pergi tandas! (先生に聞かれたら、トイレだって言っといて)
Dia sedang minta bantuan.(あいつ救援を呼んでるぞ)
Dia boleh bercakap? (あいつ口がきけるのか)
Jalam baik-baik.(お気をつけて)
Jangan nakal-nakal lagi.(悪ふざけはもうやめとけよ)

 

2.凍える町を救え(Di Bawah Paras Beku)

悪のロボット:Sejukku(冷凍庫、マレー語 sejuk(寒い)から)

 冷蔵庫型の悪のロボット・スジョックが "Panasnya tempat ini!"(暑いぞここは!) "Terlalu panas!"(暑すぎる!)と叫びながら町を氷漬けにしてしまう。凍らされた人々は口々に"Sejuknya~~"(寒いにゃー)と、妙に実用性の高そうなフレーズが連発される。一方、雪の降らないマレーシアの子供たちにとっては、路面でアイススケートが楽しめるとなれば悪いことばかりでもなさそうだ。

 懲らしめられたスジョックは、壊れた冷蔵庫の代わりに主人公アマトの家に設置されることになるのだが、そんなにエネルギーが余っているなら地球温暖化の抑制に貢献させてはどうか。

 この回では主人公アマトのお友達マーラが初登場。まず顔だけ見えるビデオ通話で救援を要請し、アマトと友人のピアンが彼女の元に駆けつけたところで、ほかの子供たちと一緒に氷漬けになったマーラが映り、車椅子ユーザーであることがわかる。それに関して特に説明はなく、友人のひとりとして普通に登場。後の回で学校のシーンが映る時も、彼女は他の児童と一緒に介助者なしで通学していることが分かる。周りの子供たちが車椅子を押したりする描写もなく、介助される対象ではなく頭の切れる女子として性格付けされている。さらに、トゥドゥン(スカーフ)を被ったムスリム女性として描かれ、いつもヘッドホン(ひそかにバティックの模様が入っている凝ったデザイン)をつけている。ほかの女子と区別を容易にするためのデザインなのかもしれないが、もしかすると聴覚過敏でイヤーマフをつけているという裏設定があるのかもしれない。

Hari baharu, semangat baharu!(新しい朝が来た、希望の朝だ)

※semangat(意欲・情熱・精神)、「新しい朝、新しいやる気!」?

Licinnya lantai ini! (滑るなこの床は!)
Panasnya tempat ini! (暑いぞここは!)
Sedapnya karipap umi. (母さんのカリーパフはおいしいなあ)

※ -nyaの例文がいくつも採集できて嬉しい

Jangan gelojoh, panas lagi tu. (よくばらないの、まだ熱いわよ)
Biasa saja, makanlah lagi.(どうってことないわよ、もっと食べなさい)

※ lagi の用例も採集

pengering rambut(ヘアドライヤー)

kerusi roda(車椅子)
Tiba masa untuk musim Sejukku!(スジョックの季節がやって来た!)
Aku ada idea.(僕に考えがある)
Usaha yang sia-sia.(あがいても無駄だ)
Jangan laju sangat, aku masih pening.(あんまりスピードを出すな、まだ目が回るんだ)

※ pening は乗り物酔いの時に使えそう。


3.ルビカ防衛システム(Sistem Pertahanan Rubika)

悪のロボット:Goosar、(Rubika)

 やたらと扉を集めて巣にしたがる鳥型ロボットのグーサー。アマトと友人のピアンは捕獲に成功するが、もう作業小屋も捕まえたロボットでいっぱいだ。その時、メカボットの様子がおかしくなる。システムトラブルで充電ができなくなったことが分かり、アマトは半ばスリープ状態のメカボットを連れ、ピアンとともにメカボットが見つかった宇宙船の場所へと向かう。

 宇宙船ではセキュリティシステムの「ルビカ」と戦うことになるが、メカボットの修理のためだと知ったルビカは協力を申し出る。めでたくメカボットのシステムは修復され、ルビカは自らをメカボットのコントローラーにインストールし、宇宙船から脱走した悪のロボットのデータ提供と監視の任に当たることに。捕獲されたロボットは、檻のアイコンをタップするとそこに囚われるので、現実の場所を取らなくて済むというしくみ。ピアンはアマトのアシスタントとして一緒に悪のロボットと対決することになる。

Nah, ambil senjata seorang satu.(ほら、武器を一人一つずつ取れ)

Tembak!(発射!)

Apa lagi yang kamu letak di dapur Umi! Habis sejuk dapur Umi!(母さんの台所にまた何を置いたのよ! 台所が寒くなっちゃったじゃない!)

Aku tahu kat mana!(どこだか分かったぞ!)

Tempat kau jumpa Mechabot dulu?(前にメカボットと出会った場所?)

Memang betul ada kapal angkasa terhempus!(つまり墜落した宇宙船は本当にあったんだね!)

1, 2, Som!(ジャンケンポン!)

gunting, batu, kain(じゃんけん)

Kain kalahkan batu!(布は石に勝つ)

※マレー語のじゃんけんははさみ・石・布。中国語の「剪刀、石頭、布」と同じだが、かけ声は1、2のあと"Som"のタイミングで出す。

4.アメイジー・ラビリンスを攻略せよ(Cabaran Labirin Amazeey)

悪のロボット:Amazeey

 図書館で本を探している間に、悪のロボット・アメイジーの作り出した迷宮に囚われてしまったジェミー先生。アマトたちは救援に向かうが、ジェミー先生とピアンが人質にされてしまう。

 この回はマーラが活躍。珍しく先生が遅れるという放送を不審に思い、先生を探しに行こうと率先して教室を出る。アメイジーの迷宮は各面のチャレンジをクリアするゲームのような構成。そしてマレーシアの小学校は、午前クラスの授業は7時半スタートらしい。半島部だと日の出が7時頃なので、学校から遠い児童は暗いうちに家を出るのだろう。

Aku masih di dalam lagi! (僕はまだ中にいるぞ!)

※うっかり気付かれず外から鍵をかけられてしまった場合に使えそうな台詞。

Bangun!(起立!)

Dia kata, dalam 20 tahun Cikgu Jamie mengajar, dia tak pernah lambat walau sekali pun! (彼が言うには、ジェミー先生は教員生活20年で一度たりとも遅刻したことがないって)

Aku nak pergi cari Cikgu Jamie.(ジェミー先生を探してくる)

Aku tak nak ketinggalan mata pelajaran ini.(この科目の進度が遅れるのはいや)

Robot jahat itu di dalam perpustakaan!(その悪のロボットが図書館にいるんだ!)

Cikgu Jamie pun selalu masuk perpustakaan!(ジェミー先生もいつも図書館に行ってる)

Ini mesti ada kaitan dengan kehilngan Cikgu Jamie.(ジェミー先生がいなくなったのと関係してるはずだ)

Kita dah terkunci di dalam ini!(僕たちはここに閉じ込められてしまった!)

Betul dan cari Cikgu Jemie sebelum kelas dia habis.(そうね、そしてジェミー先生を授業が終わる前に探そう)

Kelas juga yang kau fikir?(まだ授業のことを考えてるのか?)

Ya, nampaknya peserta kami terpaksa hadapi juga.(見よ、君たち参加者がさらに挑まねばならぬものを)

Aku faham!(わかったぞ!)

※第3話の"Aku tahu kat mana!"では tahu が用いられていたが、似たような場面でこちらは faham が使用。

Kita kena selamatkan mereka!(彼らを助けないと!)

Anda sangka cabaran ini mudah?(たやすい挑戦だと思うかね?)

Selamat tinggal! (さようなら、元気でね)

※もう少しで強酸のプールに落とされるというところでのピアンの台詞。「もうだめだ」ではなく「みなさんさようなら」。

5.ジャニターはキレイずき(Jangan Cari Pasal Dengan Janitoor!)

悪のロボット:Janitoor

 ピアンからアマトの元に助けを求める電話が入る。豪邸に暮らすピアン一家、父は仕事で不在、母は外出先で雨に降り込められて帰宅が遅くなると連絡があり、一人で留守番することになったピアン。きちんと家を片付けると言ったにもかかわらず、散らかしっぱなしの彼の前に、きれい好きロボットのジャニターが現れて襲いかかる。

Boleh duduk seorang diri?(ひとりでお留守番できる?)

Mama rasa lambat lagi hujan akan reda.(ママは雨が小降りになるまでまだかかると思うの)

Jangan sepahkan rumah.(家を散らかさないでね)

Mama bangga dengan kamu.(さすがママのピアンちゃんね)

Kita dah janji dengan Rubika, bukan?(ルビカと約束したじゃないか)

Tiada orang jawablah! Kita kena masuk!(誰も返事がないぞ! 入ってみないと!)

Amato budak baik akan jadi budak jahat.(良い子のアマトがこうしてダークサイドに堕ちるのか)

Pening kepala aku.(頭がクラクラする)

※第二話で出て来た"pening"、kepala(頭)と連用する用例を採取。

Aku rasa mungkin mereka lupa bayar bil?(もしかすると請求書の支払を忘れたんじゃないかな)

Ini sudah semestinya hantu!(絶対おばけだよ!)

Kalau kita dengar dia bersiul kuat, maknanya dia jauh. Kalau kita dengar dia bersiul perlahan, maknanya dia dakat.(大きな音で口笛が聞こえる時はお化けは遠くにいるが、小さな音で聞こえたら近くにいる)

※ hantu に関するマレーシア人の共通認識と思われる表現が出てきたので、kalau の用例としても採取。

Kau di sini! Penyepah rumah!(ここにいたか!家を散らかすやつめ!)

※Penyepah に少々難渋したが、PeN-名詞で接頭辞peny+sepah、ptsk 脱落規則に従いpenyepah(散らかし屋)と調べる。

Mesti satu persatu akan terkorban, bermula dengan yang paling kacak.(きっと一人ずつ犠牲になる、いちばんのイケメンから始まるんだ)
Ambillah saya, saya tahu saya yang paling kacak.(僕からどうぞ、僕がいちばんの美少年だとわかってますから)
Aku tiada urusan dengan kau.(お前に用はない)

6.SNSだいすきニンジャ(Ninja Media Sosial)

悪のロボット:Ninjamera

 忍者の格好をしたカメラ(映画泥棒に似ているような)が町に出没。人が恥ずかしいことをしている瞬間を捉え、またわざと転倒させるなどして、その動作を無限にループさせる。さらにそれをSNSにアップロードして like を稼ぐという悪逆非道ぶり。いちおう小学校では校内へのガジェット持ち込みは禁じられていることになっているが、みなスマートフォンを持っている。

 この回はマーラの知恵が活躍。基本的に小学生男子はアホで、女子が叱るという構図はマレーシアでも同じらしい。メカボットは基本的に叱られる側のバカ男子よりさらにおバカなので、こういう教育的内容の回も嫌味がなく見られる。

Rumah aku sentiasa terbuka untuk kau!(うちのドアはいつも君に開いてるよ)

※結果状態のter-動詞の用例をメモ。

Rubika! Kami perlukan data Ninjamera!(ルビカ!ニンジャメラのデータが必要だ!)

Ninjamera juga memuat naik video rakaman untuk memalukan mangsa!(ニンジャメラはさらに被害者に恥をかかせるために録画したビデオをアップロードするのです)

※memuat naik は「アップロードする」。

 

7.アマトは絵の天才?(Pencuri Seni Lukis)

悪のロボット:Paintasso

 美術品の収集を無上の喜びとするペインタッソ。日夜傑作を見出そうと余念がない。ある夜、幼稚園に侵入して園児の絵を盗み出す。そればかりか、画家の誘拐を企て、描いた園児をさらって逃げ、アマトとメカボットは追跡に向かう。

 ペインタッソはなぜかアマトの描いた宿題の絵に魅せられ、盗んでいってコレクションに加え、最上の位置に飾るという独特な審美眼の持ち主。最後にはアマトにカラースプレーで全身に色を塗られ、自分自身がすばらしい美術品になれた!と大喜びで「ジュンパラギ~」と捕獲される。

Mechabot, aku pun nak main.(メカボット、僕も遊びたいよ)
Apa yang kau lukis, Amato?(描いてるのは何、アマト?)

Ini lukisan atau cakar ayam?(それは絵か、ニワトリが引っかいたのか?)
Baik kau belajar lukis dengan ayam saja.(ニワトリに絵を習えばいいさ)

※下手な字を「ミミズがのたくったような」と言うように、下手な絵を鶏の爪跡に喩える決まった言い回しがあるのだろうか? "cakar ayam"で検索すると、建物の基礎工事に用いる鉄骨の構造物の画像ばかりが出てくるが、ここでは文字通りニワトリの爪を指すようだ。

Pulangkan balik lukisan aku!(僕の絵を返せ!)

※ pulang と balik の共起をメモ。

Kamu ingat saya percaya cerita karut kamu?(私がおまえのでたらめな話を信じると思うか?)
Tapi, cikgu percaya lukisan Samad dimakan kucing.(でも、先生はサマドの絵が猫に食べられたって信じました)

※受け身の用法を覚えて嬉しい。英語なら、宿題を食べてしまうのは犬と相場が決まっているが、ムスリムは一般に犬を忌避するところから、マレー語では「猫に宿題を食われる」という言い訳になるわけか。

berdesis

※プスッと歯擦音を出して、周囲に気付かれないように特定の相手の注意を引くシーンで、字幕に[berdesis]と説明があった。

8.めいわくな歌声(Karaoke Sumbang)

悪のロボット:Karok

 いつも一夜漬けのアマトは、試験前夜に慌てて教科書を開いたものの、外から奇声が。朝まで眠れず、テスト時間にうたた寝して出来は絶望的だ。二晩までは我慢したものの、ついに耐えられなくなり、メカボットを叩き起こして奇声の主を探す。

 カラオケロボットのカロックは歌と踊りが大好きで、美声で知られていたはずなのだが、とんでもないだみ声で夜な夜な近所を騒がせている。なかなか捕まらない彼に、マーラが一計を案じ、ラップバトルの舞台を設ける。つい釣られて舞台に躍り出たカロックだったが……。

Masa menjawab untuk kertas ini adalah dua jam.(この(試験用)紙の解答時間は二時間だ)

Habis tu, awak tak dapat jawab langsung?(それで、君はぜんぜん答えられなかったの?)

Maaf, kaunter telah ditutup, sila datang semula.(申し訳ございません、窓口はもう閉まっております。改めてお越し下さい)

Kau rupanya melolong setiap malam! Karok!(お前が夜な夜なわめいてたんだな!カロック!)

 

9.伝説のレトロゲーム(Teknologi Retro)

悪のロボット:Bitbobeep

 ゲームに熱中するアマトとディープのところに、ピアンが父のコレクションから見つけたと、人気ゲームの初代ソフトを持って来る。ピアンの父のコレクションルームには、パソコンをはじめ初期の電化製品各種が収集され、ゲームソフトも揃っている。さっそくプレイしようとしたディープは、古いモニターを落として壊してしまう。それを物陰から見ていて激怒したBitbobeepが三人に襲いかかる。

 Bitbobeep は、最新型のロボットに買い替えられて廃棄され、囚人ロボットと一緒に監禁されていたのだった。同情しつつも懲りないディープは、Bitbobeepの筐体にゲームソフトを読み込ませようとしてさらなる怒りを買う。そしてあえなくアマトとメカボットはゲームの世界に吸い込まれてしまい……。

 ビット絵の世界が楽しい回。最後のお片付けには初回に現れたコンチョたちが再登場するのもいい。

Cepat hidup balik supaya kita boleh sambung!(続けられるよう早く生き返れ!)

※balik(~し直す)の用法をメモ。

Walaupun sudah lama, tapi masih okey.(もう古いけど、まだ大丈夫だよ)

Kau ingat semua bahasa robot aku faham?(ロボットの言葉が全部俺に分かると思うか?)

Dia asyik cakap "bitbobeep" saja, kita panggil dia Bitbobeep kalau begitu.(こいつは「ビッボビープ」ばっかり言ってるから、それならこいつをビッボビープって呼ぶことにしよう)

Mechabot, tolong terjemahkan.(メカボット、通訳を頼む) 

10.放火犯はだれだ(Api Jadi Lawan)

悪のロボット:Apayapi

 街では不審火が続き、アマトの学校でも避難訓練が行われる。ピアンとアマトは逃げ遅れ、またしてもジェミー先生に叱られ、怪我人役で担架に乗せられるはめに。帰宅中、アマトたちは火事の現場に遭遇する。マーラの機転で重曹と酢から消化剤を作り、消し止めることに成功。そこに登場したパヤピという消防車型ロボット、消火済みと知ってどことなく残念そう。その後もあちこちの火事を消し止め、パヤピは街のヒーローとなったものの、実は自分で火をつけて消していたのだった……

Kecil jadi kawan, bila besar……jadi lawan!(小さいと友達だけど、大きい時は……敵だ!)

 小さい時はかわいい消防車の「パヤピ」、しかし巨大化したその正体は悪の放火ロボット「アパヤピ」であった。

 真のヒーローは、かつて逃げ遅れた近所の子供を燃えさかる家から救い出した際、崩落した天井の下敷きとなって大怪我を負ったマーラであったことが最後に判明。マーラはその怪我で車椅子生活になったのだった。アマトたちはそれを初めて知るが、彼女に尊敬の目を向けるだけで、あえて何も口にしない。

 避難訓練の場面では、ほかの児童がさっさと教室から出る中、ピアンとアマトは呑気に鞄に持ち物を詰め込んでいて、マーラに叱られる。このアニメではマーラは決して援助を必要とする存在として描かれないことで一貫しているが、避難訓練でも車椅子ユーザーのマーラは誰の手も借りず、アマトたちを促して避難する。ただ、階段を降りるシーンは映らない。弱者ではなく、何でもこなす自立した車椅子ユーザーとして設定されたマーラは、見えるところで他人に介助されることはなく、思い通りに動かない足を引きずったり床を這ったりすることはない。ヒーローとしてのマーラはいつも背筋を伸ばして車椅子に座っているが、日常的に遭遇しているはずの「障害」は不可視化されている。子供向けの作品に、ごく普通の級友として車椅子ユーザーを登場させることの意義は認めた上で、ほかの児童と同じような日常の背後にあるはずの、学校への行き帰りの移動ひとつをとっても、マーラや家族の負担が透明化されているのではないかという点は気になる。シーズン2にも注目したい。なお、車椅子ユーザーのアクションシーンがある映画『RUN/ラン』、こちらは「自分の足で立つ」ことに意味づけされている点に議論の余地はあるだろうが、車椅子のほか、階段に設置されたエレベーターや長距離移動の自由を確保するための自動車も含め、身体機能の補綴と拡張に必要なものが明示されている点で併せて記しておく。

 

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 この回では火事や避難に関する表現を覚えた。語句では kebakaran(火事)や pemadam api(消火器)をメモ。

Tinggalkan sahaja beg kamu!(バッグは全部置いてって!)

Tinggalkan barang-barang!(荷物を置いていきなさい)

Janganlah tolak!(押さないで!)

Semuanya selamat kucuali Pian dan Amato yang rentung dalam kebakaran sebentar tadi.(先ほどの火事で灰と化したアマトとピアンを除き、全員無事でした)

Padamkan api di badan kamu!(お前たちの体についた火を消してやる!)

Dalam kebakaran, hentikan apa yang kamu sedang lakukan!(火事の時は、していることをやめなさい)

Ingat pengajaran hari ini!(今日の教訓を覚えておけ!)

11.えらそうなチャンピオン(Jaguh Segala Jaguh)

悪のロボット:Champbot

 アマトたちの学校のスポーツ大会。アーチェリーの名手マーラが活躍し、徒競走では万年2位のアマトも、1位の生徒が転校したことで優勝のチャンスをつかむ。しかしそこに飛び入り参加のスポーツ万能ロボットが現れ……。

 四人一組のリレーに参加するチャンプボット、なんと身体のパーツをバラバラにして四体に分裂するという展開。対するアマトチームは、全員がそのあたりの用具をメカナイズして加速する。マーラの車椅子もここで初めてメカナイズ。

 僅差でリレーに負けたチャンプボットは、セパタクローをアレンジした Sepakasa なるスポーツでアマトに一対一の勝負を挑む。使うのは床に接触すると爆発するという特別仕様のボール(観客も普通に危ない)。試合に負け、スポーツマンシップを学んだチャンプボットは、アマトを讃えつつ収監される。

Sedia! Tiga, dua, satu……Mula!(位置について、三、二、一、スタート!)

Akhirnya, setelah sekian lama aku di tempat kedua, kali ini aku jadi juara!(ついに、ずいぶん長く2位だったけど、今回は僕が優勝だ!)

Disebabkan tak ramai pelajar menyertai Sukan Sekolah, kami terima sesiapa sahaja seadanya.(多くの生徒がスポーツ大会に不参加のため、我々は誰でもそのまま参加を受け付けている)

12.ブロックワールド(Dunia Blok)

悪のロボット:King Boxel

 森にキャンプに出かけたアマト、ピアン、ディープ。すべてをブロックに変える悪のロボット・キングボクセルに遭遇、アマトたちばかりかコタヒラールの街までブロックになってしまう。

 トロイの木馬ならぬキリン作戦で屋敷に潜入し、キングボクセルを倒し、再び収監する。ずっとたったひとり孤独に小さなブロックの世界にいたキングボクセルは、先に捕まっていたコンチョらロボットたちの存在に気付き大喜び。

 レゴブロックのような工作というより、自分の世界を構築するマインクラフトのようなゲームがイメージされているようだ。ブロック化されたアマトたちの造形が楽しい。

Alangkah baiknya kalau tanah beta lebih luas lagi.(朕の土地がもっと広ければいかによいことか)

※王族の一人称 beta が出現。マレーシアの子供はこうしてこういう語彙を増やしてゆくのだろう。

Soronok bukan berkhemah dalam hutan?(森の中でキャンプするのは楽しくないかい?)

Dapat nikmati alam sekitar, hirup udara segar.(環境を楽しんで新鮮な空気が吸える)

 

13.スモライの伝説(Legenda Sumorai)

悪のロボット:Sumorai(相撲+サムライ)

 刑務所に収容されていたロボットの中で、最も凶悪だとされるスモライが出現。ほかの悪のロボットは恐怖のあまり、早く自分を捕まえてくれとアマトに懇願し、ルビカの監視下に囚われて安堵の息をつく始末。

 凶悪なサムライの表象は日本軍のマラヤ占領を踏まえたものだろう。しかしなんと、スモライは軍事基地の雑用をこなすために家事ロボットに改造されていたのだった。スモライは愛猫の「おえんさん」にかしずく心優しいロボットとなっていた。調理中の不注意から基地を灰にした過去を悔い、自首しようとするが、「悪のロボットしか捕まえない」とルビカに言われる。

 そして、おえんさんと一緒にアマトの家に住み込みで働くことに。掃除、洗濯、炊事と全部こなす彼に、アマトのお母さんは大喜び。カリーパフもちゃんと作れちゃう!

 2023年現在、現実の「改造」の不徹底と困難を繰り返し思い知らされる中、マレーシアのアニメには相撲・侍・忍者と記号化された日本がユーモラスに描かれていることの意味を考えさせられる。

Nasib baik.(運がよかった)

Sumorai adalah robot tarung yang paling ditakuti di Penjara Angkasa!(スモライは宇宙刑務所で最も恐れられている戦闘ロボットだ)

Jumpa di sana petang ini semasa matahari terebenam.(今日の夕方日没時にそこで会おう)

Jangan risau, mesti ada cara untuk kalahkannya.(心配するなって、必ず倒す方法はある)

Disebabkan kecuaian aku, kita sekarang menjadi buruan!(私の不注意のせいで、私たちは今やお尋ね者になってしまいました)

 

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