イーライ・ロス『ホステル』(Hostel、2005)

バックパッカーの若者三人が、「ブラチスラヴァでいい女と遊べる」と紹介されたホステルへ。米・チェコ合作のスプラッター。ショック・シーンまでが長く、その間はふんだんなヌードで引っ張る。

「ガイドブックに載っていない」という誘いの言葉がポイント。観光化されていない「本物の姿」に直接「触れる」ことに価値を見出すバックパッカーが、現地体験とやらを消費するうちに自分も商品にされていたことに気付く。

移動の自由が制限され、オンラインでの代替が推奨された時期を経て、一周回ってじかに触れることの価値が回復されると、若者たちのアホな米国人旅行者ぶりを笑ってもいられない気がしてきた。

日本人バックパッカーのカナも登場するが、英語がまったく話せない設定。演じているのはロンドン生まれのジェニファー・リムで、「やめてー、助けてー」という悲鳴といい、英語圏での2000年代前半の日本人女性のイメージが透けて見える。容姿という価値を毀損された女は姿を消さねばならない。(四谷怪談のベタな引用が気になるけれど……)

前半のホモソーシャルなノリに対して、若干反応が遅れがちな文学青年の描写が面白い。食物を手でつかんで食べる男との列車での邂逅からラストシーンまで、指のモチーフに貫かれたホモフォビアと去勢恐怖の表現もメモ。

 

ホステル (字幕版)

ホステル (字幕版)

  • ジェイ・ヘルナンデス
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